求めるもの
〜前編〜
いつもと変わらない、土の曜日。
2人の女王候補は、王立研究院に視察に来ていた。
レイチェルとアンジェリーク。
二人とも、随分成長したものだと思う。
エルンストは彼女らの為に道を開き、一息つきながらそんな事を考えていた。
今日は他の研究員達は居ない。
土の曜日は、女王候補たちに道を開く以外、特に仕事がないからである。
エルンストは、一人のんびりとした時間を過ごしていた。
「女王候補たちの様子はどうかしら?」
急に、背後から少女の声がした。
大して驚かなくなった自分に苦笑しつつ、振り返る。
「ごきげんよう、陛下。」
そこには、金の髪の女王が居た。
彼女が初めて訪れた時は本当に驚いた。
「ごきげんよう、女王陛下・・・!」
辛うじて先ほどと同じ言葉を発したエルンストに彼女は言ったのだ。
お忍びだから、陛下と呼ばないで・・・と。
けれどもちろん他に呼び名を思いつく事もなく・・・ひどく困った。
それから・・・土の曜日ごとに彼女は来るようになった。
初めて彼女が来た時の事を思い出しつつ、エルンストは彼女の問いに答えた。
「試験は順調ですよ。今、二人とも視察へと行っています。」
淡々と言ったエルンストに女王−リモージュは顔を曇らせた。
その様子がひどく気になる。
「どうかなさったのですか?」
思わず聞いてしまって、エルンストははっと口を塞ぐ。
その様子に苦笑して、なんでもない、とアンジェリークは首をゆるく振った。
金の髪が踊る。
その様子に思わず目を奪われる・・・。
「女王候補達が居るのなら、お話は今度にした方がいいかしら?」
「いえ、かまいませんよ。」
リモージュと話すのは、最近の土の曜日の日課だった。
初めは何を話せばいいか分からなかった。
もちろん、女王が相手だという、恐縮した思いもあった。
けれど、もともと女性と話すのは苦手で・・・。
それが今では、自然に話せるようになっている。
おそらくは、それがリモージュの『力』なのであろう。
明るく、全てのものを惹きつけてやまない・・・。
全てが一瞬に思える・・・。
「そろそろ、帰るわね。」
女王候補達に見つかったらまずいものね、と少しおどけていう。
確かに、見られたらまずいかもしれない。
彼女は女王なのだから・・・。
そう思い、『そうですね』と答えると、リモージュの顔が一瞬曇った。
「陛下?」
不安になって呼びかけると、そこにあったのはいつもと変わらない、輝くばかりの笑顔。
そう、恐らくは見間違えだったのだろう。
自分の中でそう結論付けて、笑顔を返す。
「じゃあ、また次の土の曜日に・・・。」
いつからだろう?
まるで確認するかのように、リモージュが聞き始めたのは・・・。
少し不安そうに。
まるで、捨てられた子犬のように・・・。
「はい、また土の曜日に。」
そう返すと、彼女は輝くばかりの笑顔になる。
その様子を見ると、不思議な感情に襲われる・・・。
これは・・・?
走り去っていく彼女を見て考える。
これは・・・ナニ?
すこし行った所で振り向いて手を振っている彼女に、笑顔で手を振り返す。
まさか・・・。
思い当たった答えに蓋をした。
それは、気付いてはいけないモノだから・・・。
てことで、久々の前・後編です。
本当は1ページで収める気だったのですが・・・
長くなった為、2ページに・・・。
でも、ご安心を!
ちゃんと後編も一緒にUPしましたから。
次こそはリュミ様話へ行きます!(たぶん・・・)
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