ぱたん。 扉が閉じる音がする。 夢うつつでアンジェリークはその音を聞いていた。 (レイチェル?) 先ほど出て行った親友を思い出す。 彼女は水をかえに言ってくるね、 とアンジェリークを気遣いながら小声で囁き、静かに出て行った。 きっと、彼女だろう・・・。 誰かが近づいてくる気配がして、その額に冷たい手があてられた。 大きな手・・・。 (・・・誰?) レイチェルのものではない。 彼女はゆっくりと目を開けた。まぶたが重い・・・。 そこに居たのは・・・。 「ランディ様!?」 がばり、と布団を上げてアンジェリークは起きた。 「やぁ、アンジェリーク。」 満面の笑みでランディは言う。 (よかった・・・怒っていらっしゃらない・・・。) ランディのその様子にアンジェリークはほっとした。 思わずその笑顔に見とれてしまう。 「ダメだよ、寝てなきゃ。」 ランディの言葉にはっとして布団にもぐる。 「風邪を引いたんだってね・・・。」 顔色を曇らせ、心配気なランディにアンジェリークは微笑んで言った。 「もうだいぶ良くなりました。」 嘘ではなかった。おそらく、もう熱もひいているのだろう。 「そうか、よかった・・・。」 再び笑みを見せたランディに、アンジェリークは笑みを返し・・・ そして、一つの疑問が浮かんだ。 「そういえば、どうして・・・?」 中途半端な問いは、けれどランディには届いたようである。 「レイチェルが教えてくれたんだよ。君が熱を出して寝込んでいるってね。」 アンジェリークはレイチェルに感謝した。 おそらく、行けない理由をランディに伝えに行ってくれたのだろう。 「俺、しばらくここに居るからさ。眠ってていいよ。」 微笑むランディにアンジェリークは「はい」と答えた。 「ありがとうございます、ランディ様。」 「えっ・・・?」 聞き返しても返事は戻ってこなかった。 すうすう・・・。 穏やかな寝息だけが聞こえる。 (ありがとう、レイチェル・・・。) 夢うつつで、アンジェリークはレイチェルにも礼を言った。 そうして、深い眠りに落ちていく。 アンジェリークの日の曜日はこうして過ぎていった。 |