37.5
<前編>
ゼフェルが執務に出ていない。
俺の部屋に来たアンジェがそう困ったように言った瞬間、
俺の中でフツフツと怒りが湧いてきた。
今は、女王試験で。
俺たちも女王候補たちを手伝うように言われてて。
そんな大切な時期なのに・・・!!
湧いてきた怒りのままに、俺はイスから立ち上がる。
「ランディ様?」
「あぁ、ゴメン、アンジェ。」
驚いた様子のアンジェにそう言って、再びイスに座り落ち着こうとする。
無駄な努力だとは自分でも思ったけど。
それでも、なんとか普通に振舞ってアンジェの用件を聞いた後、
俺は急いで執務室を出た。
向かう先はゼフェルの館。
全力疾走、といっても間違いないほど走って、ただただ目的地へと急ぐ。
ゼフェルの館につく頃には、汗だくで、息も切れ切れになっていた。
それでも、一刻も早くゼフェルに会って、
話をしなきゃと思い、焦る気持ちで扉をノックする。
コンコン。
返事はない。
それに焦れて、さらにノックを続ける。
コンコン・・・ゴンゴン・・・ドンドン。
いつの間にか手が痛くなるほどに扉を叩いていた。
それでもアイツは出てこない。
居留守を使うつもりかと人気のないその館の扉を押した。
扉はすんなりと開き、俺は廊下へと身を滑らす。
館はいつも以上に静かだった。
勝手に入ったことに罪悪感を覚えつつ、廊下を歩く。
「ゼフェル、どこだ!?」
「こんにちは、ランディ様。」
ゼフェルの名を呼んでいると、不意に、顔見知りの青年が現れた。
みっともないところを見られた羞恥に、頬が微かに熱を持つ。
それでも、ゼフェルに早く会わなければ、と俺は挨拶もそこそこに尋ねた。
「こんにちは。ゼフェルは何処ですか?」
「寝室にいらっしゃいます。」
「ありがとうございます。」
答えを聞いて、俺はゼフェルの寝室に向かう。
場所は分かっていた。
「ゼフェル!」
声も荒く扉を開ける。
ゼフェルの姿は見当たらない。
「?ゼフェル?」
「ランディか?」
声がした。
その方向を見るとあるのはベッド。
ゼフェルらしいシンプルな・・・。
そして、そのベッドには、誰かが横になっているようだった。
「・・・ゼフェル、具合、悪いのか?」
「たいしたことねぇよ。」
気付いたことを、そのまま口に出すと、心配すんなと声が返った。
その声はどことなく気だるげで。
横になっているゼフェルの姿は見えなかったが、
だいぶ具合が悪いように思えた。
それと同時に、またサボリだと決め付けた自分に罪悪感を感じる。
「ゼフェル、俺が看病するよ。」
「はぁ?」
せめてもの罪滅ぼしに、と思いそういった俺に、
ゼフェルはカバリと身を起こした。
まじまじと俺の顔を見る。
「オメェ、何言って・・・」
「ダメか?」
「・・・わかった。」
てっきり断られるかと俯いた俺に、一瞬間を空けてゼフェルはOKした。
「じゃあ、俺、体温計借りてくる。計ってないだろ?」
「あぁ。」
他にも氷枕とか用意しなきゃな、と背を向けて部屋を出た俺は。
ゼフェルがニヤリと笑ったのを、知らなかった。
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はい、37.5の前編です。
早とちりラン様と、策士ゼー様。(笑)
37.5の意味、何?とか思われた方、後半に出てくるのでお待ち下さいv
勘のいい方なら、わかったかも?
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