ふたり



穏やかな時が、流れる。

二人で過ごす時間が、アムラームは何より好きだった。

子供たちは可愛いし、愛してもいる。
だけどきっと、彼女以上に可愛い人は居ない。
だけどきっと、彼女以上に愛せる人も居ない。

悪い親だと思いつつも、彼女はやっぱり特別で。
だから、子供たちを放って、たまに二人になりたくなる。

毎日、その二人の時間が持てるわけじゃないし、
持てたとしてもそんなに長い時間じゃない。

例えば、子供たちを送り出した後の、僅かな時間。
仕事場へ行くまでの道のり。
それから、デート。

長い時間じゃないけれど、
それでもアムラームにとってそれらは掛け替えのないものだった。

モニカと過ごす時間はひどく穏やかで、アムラームにとって一番安心できる時だ。

「モニカ、これからもよろしくね。」

ふと呟いたアムラームにモニカが微笑みで返す。
それが嬉しくて、アムラームも微笑んだ。

「あ〜!!パパ、ママずるい〜〜!!」
「ミーナ姉さん・・・。」

突然、賑やかな声が聞こえた。
それから、後をつけてきたらしい娘二人が姿を見せ、
こちらに向かって駆け寄ってくる。

「あら?二人なの?」
「お姉ちゃん達は学校だもん。」

後ろで交わされるモニカと3女のミーナの会話に耳を傾けて、
アムラームは微笑を深くした。
二人の時間が終わってしまった事を、ほんの少しだけ残念に思いつつ、
温かな目で、楽しげな2人のやり取りを見守る。

「ごめんなさい。」
「かまわないよ。」

うつむいて謝った末娘のシャオの頭を笑って撫でた。

「あ〜!!シャオ、ずるい〜!!」

ミーナがシャオとの間に入ってくる。
モニカがクスクスと幸せそうに微笑んでいた。

可愛い子供たちが傍に居る。
愛しい人が傍に居る。

アムラームはその幸せを噛み締めた。