Road



心がどんよりと重かった。

空は、縁皇の心とは対照的な秋晴れ。
彼女の口から思わず漏れた軽い溜息を、氷室は見逃さなかった。

「どうした?」

前を見て運転をしたまま、氷室が声をかけた。
それに縁皇は「なんでもないです。」と首を振る。

下校時は2人きりになれる貴重な時間で。
だからこそ、縁皇はその時間を無駄にしたくなくてワザと明るく振舞った。
心配をかけたくも・・・なかった。

けれど、軽い溜息さえ見逃さない氷室がその笑顔に騙されるはずも無く。
一つ、苦笑交じりに縁皇が気付かぬ溜息を混ぜると、行き先を変更する。
彼女にそのことを告げないまま。

「着いたぞ。」

いつの間にか考えに落ちていた縁皇はその声で顔を上げた。
目の前に広がるのは、いつか氷室と来た丘だった。

「降りるぞ。」

その言葉に頷き、車から降りる。

あの時と同じように、夕日が沈もうとしていた。

「進路の事か?」

夕日に見とれていると、いつの間にか後ろに居た氷室がポツリと聞いた。
縁皇は驚きの表情のまま氷室を振り向く。
そこで、彼女の愛する人は微笑んでいた。

「当たり・・・のようだな。」

氷室の言葉に、縁皇は静かに瞳を伏せた。
言葉なき肯定。
氷室の表情に苦笑が混じる。

「若いうちは、悩むのも仕事だ。」

悩みは、それだけ可能性を持つ事の裏返しだと言った氷室の瞳には、縁皇の無限の可能性が見えているかのようだ
った。
彼女自身でさえ見えていないであろう、可能性を。

少し羨ましい、と本音とも冗談ともとれる呟きを氷室が漏らす。

それが本気の言葉であるかのように縁皇には思えた。
そして、嬉しくなった。
思いがけず、普段触れられない氷室の本気に少し触れる事が出来た気がして。

氷室の言葉が沁みこんできて、不安が和らいだ。
変わりに、どんどん喜びが大きくなる。

知らない氷室の一面を見られたことと。
自分のことを心配してくれた事と。

その喜びの衝動のまま、縁皇は氷室に抱きついた。

「子安!?」
「ありがとうございます。」

珍しくうろたえた氷室の声に笑みを深くして縁皇は礼を言った。

迷いは、消えた。
氷室のおかげで、決める事が出来た。
彼女の夢。
それを諦めない事を。

不安も、消えた。
わかってしまったから。
どの道を選んでも、氷室は傍に居てくれると。

そして彼女はその日から夢に向かって歩き出す。

5年後、氷室と同じ教壇に立つその日まで、歩き続ける・・・。







ダイブお待たせしてしまいました。
砂治嬢の代理キリ番4664です。
既にどんなリクだったかも忘れてしまったほど昔です。(ぉぃ)
たぶん、ときメモGsで氷室の話・・・だったかな?
まぁ、メモ(下書き)が残っていたのでなんとかなりました。
いえ、しました。(ぉぃ)
ヒロインのお名前は、砂治嬢よりの依頼です。
ので、縁皇様・・・苦情はそちらにお願いします。(ぇ)
それでは、こんな駄文(本当にね・・・)で申し訳ありませんが
貰っていただけると幸いです。
素敵なリクエスト、ありがとうございましたv