螺旋
夢を、見た。
白い壁に囲まれた部屋にロザリアは居た。
目の前にあるのは、終わりが見えないほど長く続く螺旋階段。
まったく見覚えの無い場所だった。
音は無い。
その部屋にはかすかな風の音さえなく、静寂に満ちていた。
その場所に、生命感は無い。
たとえば、誰かが使えばかすかに残る気配だとかそういうものはまったく無かった。
真っ白な、誰にも使われたことの無い場所。
そこにただ一人ロザリアはいた。
部屋に扉は無い。
ただあるのは螺旋階段。
そこで、気付いた。
これは夢だと。
それでも、気付いたからといって夢は終わる事はない。
ロザリアはどうしようかと少し悩んだ結果、螺旋階段へと足をかけた。
白い部屋と同じ白い螺旋階段。
その一段目に足をかけた瞬間、目の前に見覚えのある光景が浮かんだ。
それは女王試験の始まった日。
彼女が見た始めてみた聖地の光景。
彼女が見た初めての守護聖たちの光景。
光のような速さでそれはロザリアの中を駆け巡り、消えた。
後に残るのは静寂。
懐かしさに微笑みながら、ロザリアは次の段に足をかける。
瞬間蘇る、初めての育成の記憶。
(あぁ、そうだ、わたくしはあの方に育成を頼んだ。)
そしてまた、光景は消える。
それを残念に思いながら、ロザリアはまた段を上った。
次の段に眠っていたのは、初めての会話。
その次の段には、初めての休日。
この階段はロザリアの記憶だ。
段を上るたびに思い出が蘇る。
それが分かって、ロザリアの顔に知らずに微笑が浮かぶ。
一つ一つの記憶を抱きながら、ロザリアは階段を上っていった。
段を上るたびに、記憶は蘇った。
鮮明に。
残酷なほどの鮮やかさで。
やがて、彼女は気付く。
それが全て、リュミエールに関する記憶だということに。
気付き、ロザリアは少し悲しげに微笑んだ。
それでも、段を上ることをやめない。
2人の軌跡を1人で辿る。
やがて、階段の終わりが来る。
ロザリアは悲しげに微笑んだまま、その段に足をかけた。
最後に遺っていたのは・・・別れの日。
優しく微笑むあの人。
泣くこともできず、せめてものはなむけにと微笑んだ自分。
好きです、という優しい声。
答えられず、心の中で返した『愛してる』の言葉。
去っていくあの人の姿。
いつまでも見ていた、自分。
痛みを伴うほど鮮明に蘇った記憶。
それでも涙をこぼす事無く、彼女は真っ直ぐに顔を上げていた。
目の前の白い扉に手をかける。
扉を開いた瞬間、そこから光が溢れ出た。
その溢れる光の中、リュミエールの優しい微笑が微かに見え。
ロザリアは光に抱かれて瞳を閉じた。
夢が覚めないことを願いながら・・・。
目覚めると、そこはいつもの執務室だった。
彼女好みに整えられた部屋。
女王になった時から、ほとんど変わらない部屋。
いや、この部屋が時を止めたのは、彼が去ってからだ・・・。
少しでも忘れないようにと、あの時にしがみついた。
それを自然に笑える自分に、ロザリアは少し驚く。
その時、扉が開いた。
「ロザリア、新任の水の守護聖が決まったわ!!」
嬉しそうな、補佐官の声。
あぁ、そういえば、あの人の後にきた水の守護聖も先日この地を去った・・・。
そうか、もう3人目の水の守護聖に自分は会うのだ・・・。
長いときを過ごしてきたもののだ、と懐かしみ、変わらない補佐官を見る。
「それがね、彼、何ていったと思う?」
「彼?」
「新任の水の守護聖よ!」
知らない人物が何を言うかなんて見当もつかない。
考え込んだロザリアの顔を、リモージュが下から覗きこむ。
「『わたくしは、陛下にもう一度お会いするために来ました』」
驚きに目を開いたロザリアにリモージュが微笑む。
祝福するように。
ロザリアと蒼い髪の守護聖が再会するのは、あと少し先の話。
−二人の運命は螺旋の如く。決して途切れることことはない−
|
一応、HappyEndなつもりで書きました、リュミロザです。
ロザリアの夢の中の部屋は、灯台みたいなイメージでした。
ロザリアがこんな夢を見たのは、再会の前兆です。
で、二人はこの後、今度こそ幸せになってます。
リュミ様がロザリアの事を忘れなかったのは、愛vですね。(ぉ)
ちゃんと転生してまでロザリアに会いに来る・・・。
そんな話を書きたかったのです。
・・・文章力が無いのは目を瞑って下さい・・・。
|