非・日常 



あの野郎はいつも笑っている。

このおかしな平和だけが続いていく世界の中で。



仕事して、適当にくっちゃべって。
それで過ぎていく毎日。
それを繰り返すうち、たまに回線が切れそうになる。



昼はいい、気を紛らわすことができる。
同じ立場におかれたもの同士、相互監視しながら平行を保っていられる。
退屈になんて負けねぇ。
運命になんて泣いてやらねぇ。
そのために選ぶ方法はそれぞれでーーーーー俺は背を向けた。
避けること、否定すること。
それを咎める他の連中を見ながら、
俺はまだ此処に染まりきっていない自分を正常だと許した。
俺が逃げて否定した分、
真正面をむいてやがる奴が損をすることはわかっていた。
例えばいつも、この環境の中でバカみたいに笑顔でいるアイツ。
もっと器用にいきている奴はたくさんいるっていうのに、
俺に当てつけてるのかってくらいに、あの野郎は逃げていなかった。
だから俺にとっては、その存在がわずらわしかった。




夜はいい、そう言えたのは前のこと。
前は普通だった景色が、どんどんレトロになってゆく。
女の服装の流行ほど飽きっぽいものはなく、
街を歩くだけで時間の波に足元を救われそうになる。
もっと前は違ったじゃねーか。
愚痴りながら歩いても、誰も自分に気をとめねぇ。
前に見つけた、いい仕事をしていたバイク屋にはクローズの看板。
夜通し一緒に騒いだ連中も、今では会うこともなくなった。
息抜きだったはずの外出が、
自分はこの世界の何処からもつながっていないのだと知らされる。



永遠と続く日常と、猛スピードで過ぎていく俺抜きの世界。
その2つに揺られながら、それらを受け入れることができずに俺は背を向けた。
これが俺の日常。
つまんねー日常。
この先の未来にいったい何があるのだ?
何も見えやしねぇ。





真夜中は、最もタチが悪りぃ。
一度疑問を持ったら、不安ばかりが増幅しやがる。
こんな日常はいるまで続くんだ?
壊れない日常が俺を壊す。
いても立ってもいられねー気分になって、俺は真夜中の聖地を駆け出した。
息があがるのも構わねーで一目散に走った。
行き先は自分でもわからなからない。
ただこの気持ちを誰かにぶつけたかった。


日常を打ち破れ。
日常を打ち破れ。
日常を打ち破れ。


シグナルが点滅する。
崩れそうな視界に、あの笑顔がよぎった。






「どうしたんだ、ゼフェル。こんな真夜中に」
深夜の突然の訪問をあの野郎は普通に受け入れた。
さすがに嘘ぶいた笑顔は見せなかったから、俺は少し落ち着けた。
今、あんな顔をされたら、俺は殴っていた。
「俺はオメーの笑顔が気にいらねぇんだよ」
「へっ?何いってるんだ、突然」
ランディはわけがわからないといった様子で聞き返す。
テメェにだけは分かられてたまるか、自分でも分からねぇ、こんなガキみたいな気持ちに。
この日常に囚われそうになって、藁でも掴みたくなっていたなんてよ。
お前が笑って受け入れようとしているこの日常。
俺は笑えねぇ。


「何かあったのか」
兄貴づらして、心配そうな声をかけてくるランディ。
普段は、自分もギリギリって顔してるくせに、俺の心配なんてしてるじゃねーよ。
全く、コイツは俺をイライラさせる達人だぜ。
ずっと黙っていたら、ランディは、えーと、なんて頭を掻きながら話題をかえてきた。
「あのさ、もうすぐ女王試験が行われるってきいたか」
わざとらしい。
だが、会話にのってやる。
「そういや聞いたな。面倒くせ・・・あ、オメーもしかして、
 少しはこのツマンネー毎日も楽しくなるとか平和ボケしたことを考えてるのかよ」
同じことも考えたことがあるくせに、それを棚上げして俺は聞いてみた。
「変かな。守護聖としての力を測るチャンスだし、
 女王候補の女の子達に会えるのも俺は楽しみだな」
平和そうなその返事をききながら、また、あのシグナルが俺の中で点滅する。



日常を打ち破れ。
日常を打ち破れ。
日常を打ち破れ。



特別なことを言っているわけじゃないのに、コイツの一言一言は俺の癪にさわる。
俺もアイツも同じことを思っているはずなんだ。
この日常の変化。
近いうちに変われそうな『女王試験』それに、密かに期待する気持ち。
だけど、同意なんて絶対してやらねぇ。
「けっ、人に頼ってるんじゃねーよ。楽しみなんざ自分で見つけるものだろ」
ランディは笑顔をみせていいやがった。
「ゼフェルは強いな」
どこか頼りなく見えるその笑顔に、本心を隠されたようで俺はまたカッとなった。
これじゃあ、瞬間湯沸し沸騰機だ。
本当に強いのはどっちだよ。
なんで、そんな変な顔して笑っていられるんだよ。


うんざりする程に近くにるはずが、まだ俺はコイツのことがわからねぇ。
コイツはもっといい顔をする奴のはずだ。
俺にはまだ見せないし、見たくもねぇけど。
こいつが普通に笑える日がきたらいい。
そんな事に興味をもった、つまんねー夜。
少しだけ日常を超えた気がした。


「・・・・なぁ俺達でやろうぜ。なんか面白くってすげー事」
事態が変わるまで待っているなんてごめんだ。
何かが起こるかもしれない『女王試験』の予感。
だけど、そんな先に期待するより、今ここからだって何かは変わるはずだ。




日常を打ち破れ。
日常を打ち破れ。
日常を打ち破れ。











最初に変わるのは誰だ?








 







もう、ありえませんよ〜〜〜!!
どうしてあんな駄文にこんな素敵な続きが書けるのか謎です。
呼んだ瞬間感動して、翌日友人sに自慢しまくりました。(ぉ)
もう、本当に素敵過ぎです!!
本当は裏部屋に置こうかと思いましたが、
もったいないのでやめました。
だって、こんな素敵な文章を裏に置くのは・・・ねぇ?
姫香様、本当に素敵な作品をありがとうございました!!