空は青く澄み、花はつぼみを膨らます。

庭には、思わず近づいてみたくなるほどの見事な梅。
鷹通は衝動通りに庭へ降り、梅を見上げ、空の眩しさに目を眇めた。

「何か興味深いものでもあったかな?」
「えぇ。とても見事な枝振りですね。」

突然掛けられた屋敷の主の声に、さして驚く風もなく鷹通は返した。
言葉を返しながら、ゆっくり声のした方を振り返ると、
微笑んで立っている友雅が視界へと入る。

相変わらずの読めない微笑。
それに鷹通は内心ため息をついた。

「お元気そうで何よりです、友雅殿。体調が優れないと伺ったのですが?」
「お蔭様で、だいぶ良くなったよ。」

嫌味に、さらりと微笑んで返されて。
その受け流し方に、鷹通はため息さえ出せなかった。

言いたいことはあった。

本当なら、
貴方が居ないと皆が私に貴方の場所を聞くのですよ?と嫌味を続けるつもりだった。

それでも、さらりと流したときに見えた友雅の微笑みに寂しさが垣間見えたから。
だから、鷹通は何も言えなかった。

区切りをつけるように、一つため息をつく。
無理に出したそれは、それなりには効果が有ったようで、
鷹通は自分が何をすべきか分かった。

確かめなくてはいけない。

そう思い、半ば無理やり言葉を紡ぐ。

「どうして本日は内裏にいらっしゃらなかったのですか?」
「雨が降らないかと思ってね。」
「雨?」

鷹通は思わず空を振り仰いだ。
白い雲が流れていく。
とても雨が降るようには思えなかった。

「あの日も雨が降っていたからね。」

懐かしむように友雅が呟いた。
独白のようなそれに、ようやく分かった。

今日は・・・。
今日は、彼らの神子が来た日だ。
あるべき場所へと帰ってしまった彼女が、この地へと招かれた日だった。

「神子殿を想っていらっしゃったのですか?」

スルリと出た言葉。
それに友雅は笑っただけだった。

いつもの読めないものとは違う、悲しげな微笑。

それは、鷹通には言葉を肯定しているように思えた。

悲しい人。
そう思った。

大人で、格好悪く足掻くことが出来なくて。
手離してしまって。
・・・後悔して。

ふと、彼が雨を望むのはその涙を隠すためかもしれないと思った。
ただ泣くことは、きっと彼にはもう出来ないのだろう。

だから、鷹通は祈った。
今日、雨が降るようにと。
思い出すしか出来なくなったこの人が、せめて今日、涙を流せるように、と。

雨が、友雅の涙を隠すように、と。

鷹通は、祈らずにはいられなかった。







という訳で、神羅叶様への相互記念贈呈品ですv
ちなみに返品付加v(ぉ)
神羅嬢の所はノーマルオンリーなので、危なくならないように頑張りました。
無駄な努力でしたが。(ぇ)
まぁ、深読みしなければ大丈夫です。(ぉ)