夢を見た･･･。
夢というにはあまりにもリアルで。
現実にしてはあまりにあいまいな。
そんな、夢を見た。
夢の中に居た、自分と彼。
幸せそうに笑う二人。
それが自分たちで無いと気付くまでに数瞬。
夢の中の彼は黒髪で、左右の瞳の色を違えていた。
夢の中の自分は髪が長かった。
エリスとレヴィアスだ。
気付いたその瞬間、夢は霧へと消えた。
寝起きの時のような曖昧の中の夢は終わった。
夢とうつつの狭間から抜け出して、コレットはため息をつく。
（嫌な夢･･･。）
ベッドから立ち上がり、上着を羽織、外へ続く扉へと向かう。
頭は妙に冴えていた。
夢から抜け出したばかりとは思えないほどに。
もう、眠れそうに無かった。
外へ出ると満天の星空が彼女を見上げた。
感嘆のため息がコレットの唇から零れる。
「眠れないのかい？」
掛けられた声は突然だった。
思わず、星が話したかと思うほどに。
「夢を見たんです。」
振り返りもせずコレットは返した。
声が星から降ってきたものでないと彼女には分かっていた。
聞きなれた仲間の声･･･ランディのものだ。
「夢？」
「レヴィアスの夢を。」
「・・・っ。」
罪を告白するように言うと、相手が息を呑むのがコレットには分かった。
それこそ、手に取るように。
そしてそれは、彼女が予想したとおりの反応だった。
「あいつは敵だよ！？」
声を荒げる彼に、コレットは背を向けたまま思わず笑った。
そんな事は彼女だってわかっていた。
「君に近づいたのだって、きっと何か目的があっての･･･。」
「知っています。」
相手の言葉を奪い、それ以上のことを言わないよう止めさせる。
知っていた。
そんな事はランディ以上に。
コレットはレヴィアスがなぜ自分に近づいたかさえ知っていた。
あの夢を見て気付いた。
自分が･･･彼女の身代わりだったと。
「それでも・・・。」
それでも、夢の中の彼が幸せそうだったから。
笑っていたから。
「私は、彼を救いたい。」
そう言ってコレットはランディを振り向いた。
そこに浮かぶのは穏やかな笑顔。
救い。
それはあまりにも傲慢な願いだった。
誰かを救う事は、口で言うほど簡単ではない。
彼女もそれを自覚していた。
そして、それが自らのエゴであるとも知っていた。
彼が救いを望まない事も分かっていた。
もう、エリスは居ないから。
彼女しか、彼を救えないから。
だからレヴィアスが救われない事も分かっていた。
それでも、コレットは願った。
レヴィアスが救われるように、と。
