『幻想異伝』〜短編巻物〜
=彼の存在意義=



「―絶対にそうだよね!!」
「はい、絶対にそうですよ」



そんな声が聞こえてきたのは、鷹通が土御門殿に訪れていたある日のことだった。

「・・・おや?あれは・・・」

ふと廊下を歩いていた鷹通の視界に入ってきたのは、2人の愛らしい少女たち。
この世界のために日夜努力をしてくれている、異世界の住人たちだった。
どうやら、今日は散策は休みらしい。とは言え、このまま帰ると言うのもあれだったので。

「こんにちは、神子殿、匡哉殿」
「あ、鷹通さん!」
「こんにちは、鷹通さん」

柔らかく声をかければ、振り返った少女たちは愛らしい笑顔を向けてくれる。
・・・この笑顔を見たいがために、色々と努力している者たちもいるらしいが。

「神子殿のお供に・・・と思っていたのですが、今日はお休みなのですね」
「そうなんです・・・って、もしかしてお仕事があったとかですか?!」
「ああ、それは大丈夫ですよ。仕事のことはちゃんとしていますので。
 ・・・ところで、先ほどから何のお話をされていたのですか?何やら、白熱していらっしゃったようなのですが」

そういえば、ついさっきもやけに熱の入った声が聞こえてきたばかりである。
尋ねてくる鷹通に、2人は聞こえていたとは知らなかったのか、微かに頬を染めていた。
だが、意を決して口を開いたのは、あかねである。

「実はですね」
「はい?」
「・・・友雅さんって、何で八葉なんだろうって討論してたんです!!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。


橘 友雅(31)。地の白虎であり、帝の右腕とも呼ばれる有能な武官―左近衛府少将である。
その彼が、何故八葉に選ばれたのか。どうやら、そのことを2人は白熱して討論していたらしい。
それはいいのだが、鷹通としては答える内容は1つしかないのである。

「それは・・・友雅殿は素行は問題がありますが、有能な方ですからね。
 内裏をお守りしている左近衛府少将として、武官として立派な活躍を・・・」
「「そこなんです!!!」」
「・・・はい?」

思い切り突っ込まれてしまった。思わず、後ずさる鷹通。

「友雅さんは武人なんですよね?」
「え、ええ」
「でも、詩紋くんより霊力がないんです!」
(友雅さん霊力:55<詩紋くん霊力:59)
「・・・まぁ、それは武人ですから・・・」
「天真さんより耐久力がないんです!!」
(友雅さん耐久力:53<天真くん耐久力:60)
「・・・それは・・・」
「鷹通さんより攻撃力が低いんです!!!」
(友雅さん攻撃力:50<鷹通さん攻撃力:55)
「それはかなり問題ですね」

今更気づいてしまった事実。言われてみればそういえばって感じの、恐ろしい事実である。
まぁ、まだ霊力はいいだろう。それを言ったら、青龍組など悲しいほど低いのだから。
問題は、攻撃力と耐久力だ。何しろ、学生と文官に負けてるのだ、仮にも武人が。

「それに、友雅さんって31歳なんですよね?」
「・・・ええ」
「この世界で31歳って言ったら、かなり歳じゃないですか!!!
 そんなご老体に鞭打たせて怨霊と戦わせていたなんて、私、神子として失格だって思いました!!」
「・・・・・・」←硬直

・・・神子殿、かなりこの世界において禁句用語を連発していますね・・・。
なんて事を思いながらも、2人の勢いに押されて何も言えない鷹通であった。

「あかねさんは悪くないですよ。悪いのは龍神さんです」
「龍神なのですか」
「だってそうじゃないですか!元々八葉を選んだのは龍神さんですよ?
 つまり、そういうことを全て踏まえていた上で、友雅さんを選んでしまったんです!
 もしかしたら選択ミスってことも考えられますけど・・・」
「・・・・・・」←滝汗

・・・匡哉殿、貴女もなかなか恐ろしいことを口になさる方なのですね・・・。
さらに恐怖を覚えてしまったものの、やっぱり何も言えない鷹通なのでした。

「と言うことで、私たちは何で友雅さんが八葉に選ばれたのかを考えていたんです」
「は、はぁ・・・」
「そして、ある結論に達したんです。ね?あかねさん」
「うん!これはかなり確実だと思うんですよ!!」

・・・・・・何と言うか、これ以上は聞きたくないような聞きたいような、微妙な気分です。
心なしか腰が引けてきているものの、ここから逃げ出すことは不可能だろう。
まさにボス戦さながら。泣きたい気分を抑えながら、鷹通は何とか己を保っていた。

「まず考えたのが・・・色気部門です」
「・・・いろけ・・・ですか?」
「だって、やっぱり花が少ないじゃないですか〜。その分を、男の色気でカバーって感じで」
「・・・」
「確かに友雅さんはセクシーボイスしてますし、前肌蹴てますし、色気そのものです。
 でも、意外と泰明さんや永泉さんも色気部門なんですよね〜。違う視点では、天真くんも」

つまり、友雅が止め役というだけで、意外と八葉も色気を持っているやつは多いのだ。
となると、これは一部の理由ということだろうと推測される。ならば、真の理由とは何か?

「・・・」←そろそろ脱水起こしそうなくらい汗かいてます
「・・・やっぱりルックスですね〜と」
「・・・・・・」
「そうでもしないと、友雅さん以外の人も八葉に選ばれた理由が分かりませんよ〜。
 頼久さんや泰明さんはまだしも、鍛冶師見習いとか文官とか単なる学生とか坊さんとか、ありえませんって!」

・・・・・・結局辿り着くのは、そういうところらしい。ある意味、安心と言うか何と言うか。
他の男たちが見たら顔を緩ませそうな笑顔で語る2人に、だが鷹通だけは震えを覚えていた。
おそらく、今まで通りに接することは不可能だろう。と言うか、絶対に不可能だ。

「―神子様〜匡哉様〜、菓子が届きましたわ〜」
「あ、お菓子だって!行こ、匡哉ちゃん!」
「そうですね。鷹通さんもご一緒しますか?」
「・・・いえ、私は・・・」
「そうですか・・・じゃあ、また!」

少し残念そうに俯きながらも、微笑んで少女たちは去っていった。
しばしの沈黙。何とも言葉が出てこない鷹通だったが、ふとあるものを見つけてしまった。


「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・強く生きましょう、友雅殿」


・・・静かに涙を流す相方に掛けるべき言葉は、それ以上出てくることはなかった。

=終=



作者様(神羅 叶様)よりのコメント

友雅ファンを敵に回すこと確実〜な一品です(笑)
でも私、彼のことが嫌いなわけじゃないんですよ?
ただ、武官らしいところをあまり見たことがないものですから、ついついこんなものを・・・(おい)
ちなみにこのネタ、カーニバルにも微妙に出てましたね。後
で気づきました。ごめんなさい、私の方がひどいこと言いまくってます(汗)
・・・また、これは14500キリの没ネタであることは、飽くまでも内緒ということで・・・v



読んでいて爆笑しました。
やっぱり八葉の選定基準はそこなのですね。(笑)
自分がギャグを書けない人間なだけに、すごく勉強になりました。
コチラも貰っていいとの事でしたので貰ってきちゃいましたv
一度に二つもすみません・・・!!