輝いている彼女が好きだから。



底抜けの青空が広がる春のある日。
ゼフェルは一人、公園に来ていた。

整備された聖地の公園には色とりどりの花が咲き乱れ、新緑が目に痛いほど鮮やかだった。

「いい天気だな」

思わずゼフェルが素直に呟いてしまうほどの日和。
赤い目を細めつつ、彼は花壇に腰掛けた。

少し行った広場から、子供たちの声が聞こえる。
キャーキャーという明るい声は、普段なら耳障りなものなのに、今日は特にそうとは感じなかった。

春の風が頬をなでる。
目をつぶり、空を見上げ、感覚だけで太陽を仰ぎ見る。
ゆっくり目を開けると、春の太陽はこちらを温かく見ていた。

(アイツみたいだ。)

彼女が見るのは彼ではなく、宇宙に生ける全てのものだったけれど。
それでもその温かさは彼女のものと酷似していた。

しばらく太陽を見つめ、それから彼は花壇から降りた。
広場のほうへ行ってみようと足を向ける。

彼女の恵みをよりこの身で感じることができるように。

その歩みの先に居たのは…。
広場で子供たちとともに笑っている彼女だった。

「へ…アンジェ!」

思わず陛下と呼びかけ、とっさにその名に切り替えたゼフェルに彼女が振り向く。
太陽の微笑を浮かべながら。

「あら、ゼフェル?」

よっぽど「『あら、ゼフェル?』じゃねー」と叫びたかった。
それでも子供たちに配慮してその叫びを封じ込めたゼフェルは、呟きとも取れる疑問を口に出した。

「なんでオメーがこんなところに居るんだよ…。」
「だって、とてもいいお天気だったんですもの。」

聞かなければよかった、と思うような答えをリモージュは返してくる。
それも、笑顔で。

人間、怒りを通り越すと笑顔が出るものらしい。
ゼフェルは珍しく笑って、リモージュの方を見た。

「ゼ、ゼフェル?」
「何も言わずについてこい、アンジェリーク」

微笑みを浮かべたまま、その顔に似合わない低い声で言われてリモージュはビクビクとゼフェルに付いていく。
二人は広場を抜け、そして、誰も居ない静かな木々の中についた。

「ゼフェル?」

ようやく立ち止まったゼフェルにリモージュが声をかける。
暗い笑みを浮かべたまま、ゼフェルはリモージュを見た。

「言い訳があるなら聞いてやる。」

うっ、とリモージュが息を呑む。
それから、見ているのが気の毒になるくらい暗い空気を背負い込んだ。

「だって、子供たちの声が聞こえたんですもの…。」

そういったリモージュに、ゼフェルは脱力してしゃがみこんだ。

(かわんねーな。)

そう、思った。

彼女は変わらない。
女王候補だった頃から。
いや、おそらくはその前から。

彼女は変わらない。
ゼフェルが好きだった彼女のままだ。

(それなら…)

それなら、と思った。
彼女を守りたいと。
いつまでも今のまま、その太陽の笑みを浮かべてられるようにと。

「ゼフェル?」
「これからは…。」

不安そうに名を呼んだリモージュをしゃがんだまま見上げた。
その顔には、声と同じように不安が浮き上がっている。

「これからは外に行く時、俺に言え。」
「え?」

聞き返したリモージュに、けれど何も言わず立ち上がり、ゼフェルが彼女の手をとった。
そのまま広場へ向かう。
広場では子供たちがリモージュの帰りを待っていた。

「ほら、行ってこい。」

背中を軽く押したゼフェルを振り返ってリモージュは笑顔を浮かべた。

「ゼフェルも行きましょう?」

今度はリモージュがゼフェルの手をとった。
そして二人、子供たちの輪に入る。

いつまでも守りたいと思った。
その傍で。
輝いている彼女が好きだから。







というわけで、久々の更新ですv
いえ、スランプから脱出できたわけではないのですが。
Newsの新曲(Yellでしたっけ?)を聞いてて、ふと思い浮かんだので。
別にNewsのファンというわけではないのですが。(汗)
なんとなく、こういうのもいいかなぁって。
今回は一人称ではないもののゼフェル視点で書いてみました。