祈り



空を月が支配するなか、リモージュはバルコニーに居た。

彼女の背後に広がる広間では、パーティの後片付けが行われている。

先ほどまで、その広間では宇宙に平和が戻ったことを祝うパーティが開かれていた。

主役はもう一人の天使…コレット。

皇帝を倒した彼女に、人々は賞賛とねぎらいの言葉をかけていた。

着飾った貴婦人たちの、おべっかいに溢れた甲高いさえずり。

吐き気がした。

ナニモシラナイクセニ!

そう思った。

怒りが溢れそうだった。

そんなリモージュの思いを知らずに、コレットは微笑みを貴婦人たちに返していた。

それが痛くて。

無理に笑っていることが伝わってきて、痛くて。

先ほどのコレットを思い出し、リモージュは泣きそうになるのをこらえた。

彼女の笑みが悲しみを含んでいたことに、ごく近しいものは気付いていた。

「アンジェリーク…」

泣きそうな顔をした彼女を、温かい腕が包んだ。

誰かは振り向かずともわかる。

慣れ親しんだ温もり。

悲しみも怒りも溶かしてくれるその温もりの主は、クラヴィスだ。

回された腕にそっと手を添えて、アンジェリークは微笑んだ。

心配してくれているのが、触れた部分から伝わってくる。

押し殺した悲しみと怒りを、クラヴィスは全部知っているのだろう。

その腕に残る傷跡に、リモージュは服の上からそっと触れた。

愛しげに…悲しげに…。

表情が少しだけ色を変える。

後悔と、少しの喜びが混じる。

服の下にある傷は、皇帝との戦いでついたもの。

自分の為に付いた傷。

それは、思いの深さを知らしめてくれて。

少しだけ、嬉しくて。

でも、それ以上に痛かった。

自分が傷つくほうがいくらかマシだろうと思う。

愛しい者が傷つけられるのは、自分が傷つくことより痛い。

(あぁ、でもきっと…コレットはもっと痛い。)

自分の心よりももっと、コレットの心は悲鳴を上げているだろう。

愛するものを自らの手で屠ったのだから…。

一生消えることの無い、クラヴィスの腕に残る傷。

それは、コレットの心の傷となんと酷似しているのだろう?

きっと、彼女の心からその傷が消えることは無い。

(でも…きっと皇帝は望まない。)

そんな風に、コレット自身が傷つくことを。

彼もまた、彼女を愛していたのだから。

涙を流しているであろうもう一人の天使のためにリモージュは祈った。

今度は違う形で、2人が巡り会えるように…と。






リンリン様、本当に遅くなって申し訳ありません・・・!
パソを新しくしたのはいいものの、一月もたたずにそのパソが壊れ…。
本当に本当に申し訳ございません。(礼)
その上、この駄文度の高さ…。
もう、どうやってお詫びすればよいのやら…。(泣)
こんな駄文ですが、貰って頂けたら幸いです。(礼)
最後になりましたが、リンリン様、素敵なリクエストをありがとうございます。