思い出



紫の髪の女王補佐官が、二人の女王候補を懐かしげに見ていた。

二人とも、どうやら聖地に慣れ始め、上手く育成しているようだ。

笑顔も陰りなく、とてもよい兆しだと、ロザリアは微笑んだ。

聖殿の2階から二人を見ていると、女王候補の頃の思い出が、鮮明に蘇ってくる。

そう、あの時自分は、女王候補だった・・・。




「あなたは本当に女王候補らしくなりましたね〜。」

女王になる事は、ロザリアの夢で。

少し前ならひどく喜んだであろうその言葉に、けれど、ロザリアは胸が痛くなった。

ルヴァに認められる事は嬉しい。

肩に力の入っていた彼女を、優しく諭してくれたのは彼だった。

いつしかその優しさに心奪われ。

気付けば、思いは膨れ上がっていた。

不器用な彼女は、それでも気付かず、認められるために頑張った。

そんな状態が変わったのは、少し前の日の曜日。

彼女がルヴァにマフィンをプレゼントした時の事だ。

「これは美味しそうですね〜。」

何気ない事だった。

だけど、本当に美味しそうにマフィンを食べてくれた事が嬉しくて。

そして、気付いた。

自分が、ルヴァに恋している事に。

けれど、自分は女王候補で。

女王候補らしくなった。

その言葉が、彼女を貫く。

不意に涙があふれそうになって、ロザリアは挨拶もおざなりに踵を返した。

ルヴァが訪ねてきたのは、その夜の事だ。

随分悩んだ結果のようだった。

「私は言葉が足りないようで・・・。」

そう言って、悲しげに笑ったルヴァに、ロザリアは首を横に振った。

「違いますわ。」

ルヴァの言葉が悪いせいではない。

「わたくしは、ルヴァ様が好きです。」

ぽつり、呟くようにロザリアが言った。

ルヴァの顔も見ずに、懺悔のように続ける。

「わたくしはルヴァ様が好きで、だから、あの言葉は痛かった・・・。」

女王候補だと、思い知らされて。

おそらく、最大級の好意の示し方であったのに・・・。

それが、たとえ女王候補のロザリアへのものでも・・・。

そんなロザリアをルヴァは愛しげに見つめ・・・。

月の下で二人の唇は重なった。



そう、その後にルヴァは確かこう言ったのだ。

『貴女と同じ意味で、貴女が好きです。』

思い出してロザリアはクスリと笑みを洩らした。

「ロザリア、お茶にしませんか?」

ルヴァの穏やかな声が聞こえる。

女王補佐官となった彼女の側には、愛しい恋人の姿があった。






勝手に捧げもの第2弾。佳夏様への捧げものです。
以前キリリクを頂いた時の第2希望でした。
リクは『ルヴァ様とロザリアのファーストキス話』でした。
果たして、佳夏様の思っていたような作品になったかどうかは不安ですが・・・。
勝手に捧げさせていただきますv
気に入ってくださると幸いです♪