輪廻



何よりも大切な人が居た・・・。



コンコン。

ノックの音が部屋に響いた。

返事をする前に、扉が開く。

「こんにちわ、クラヴィス。」

中へ入ってきたのは、緑の瞳の女王。

髪は、彼が愛した女性と同じ、金だった。

クラヴィスは、彼女が目の前まで来るのを黙ってみていた。

「陛下・・・。」

吐息とともに彼女を呼ぶ。

その呼び名は、かつて愛した人のものと同じ。

リモージュを見る瞳は、どこか愁いを帯びている。

そんな、クラヴィスに、リモージュも悲しげな微笑を浮かべ。

けれど、彼が気付かないうちに、それを別の表情へと変えた。

明るい、女王候補の頃と変わらぬ笑顔。

「今日は、クラヴィスの誕生日でしょう?」

確認するように、リモージュが言った。

クラヴィスの鉄面皮が、微かに動く。

それを見て、リモージュは嘆息した。

「・・・やっぱり忘れてたのね?」

元々、そういうのにこだわらない人ではあるけれども・・・。

ワザとらしく溜め息をついて、恨みがまし気に、リモージュはクラヴィスを見た。

もっとも、このアルカディア自体いつ消えるか分からない状態では、

誕生日を忘れても無理のないことかもしれないが・・・。

「それでね、プレゼントがあるの。」

それでも、どうしても祝いたかった。

あるいは、こんな時だからこそ。

言ったリモージュの双眸には、強い決意。

それにクラヴィスは少し溜め息をつき、リモージュを促した。

こんな瞳をしたリモージュは、誰にも止められない。

「水晶の宮のプレゼントの木の下にあるから、取ってきて欲しいの。」

満足そうに笑みを浮かべてリモージュは言った。

なぜわざわざそんな真似を?

問いは、けれど言葉にはしなかった。

クラヴィスは、一つ溜め息をつきゆっくりと立ち上がった。



水晶の宮は、美しい場所だった。

けれど、クラヴィスはそれに目をやることなく、淡々と進んでいく。

そして、難なくプレゼントの木へ辿り付いた。

木の下には少女が一人立っており、プレゼントは見えない。

嘆息をして、プレゼントを確認すべく、彼女の前へ回ろうとした。

そんな時だった。

少女が振り向いたのは。

少女は、何よりも大切だった人に酷似していた。

「久しぶりですね、クラヴィス。」

言った声も、彼女のもの。

「アンジェリーク・・・?」

クラヴィスは思わずその名を呼んだ。

少女は肯定するかのように微笑む。

「何故?」

彼女が退位したのは随分前で。

ここにいるはずなど無かった。

ならば、コレは幻なのだろうか?

「退位の後、私はたくさんの星を巡り、死にました。

 幸せでした。少なくとも、私はそう思っていました。

 でも、もう一度生まれた時、魂があなたを覚えていた。」

転生?

もう、理屈などどうでも良かった。

クラヴィスはアンジェリークを抱きしめる。

「愛している、アンジェリーク。側に居て欲しい。」

いつか伝えた言葉。

それにアンジェリークは笑顔で頷いた。

恋人達は、今まで離れていた時を埋めあうかのように抱きしめあった。






佳夏様よりのリクエストで255代目アンジェ陛下とクラヴィス様のお話です。
実は、リクメールを見たその日に、友人とこのCPについて話していたので、ビックリです。
中身は・・・以前書いた『運命の輪』にどことな〜く似ている気が・・・。
きっ、気のせいです!(汗)
最初の方が、クラリモっぽくなったかなぁ〜などと。
この話の裏設定としては、クラ←リモだったりします。(笑)
最後になりましたが、この話は佳夏様に捧げますv
素敵なリクエスト、ありがとうございましたw
佳夏さまがこの話を気に入ってくださると幸いです♪