パンドラの箱
開けてはならないその箱を、俺は開けてしまった・・・。
俺の思いはパンドラの箱と同じで、開けてはならないものだった。
けれど、俺は開けてしまった。
パンドラの箱を。
それは、もう、戻れないということ。
箱からあふれ出る不幸を甘受しなければならないということ。
けれど、俺にはそれが当然に思えた。
この思いはきっと罪だから。
あの綺麗な人を、同性の俺が思ってしまった。
それはあの人を汚してしまったようで、後ろめたくて。
だから、この思いはきっと罪。
それでも、伝えておきたいと思った。
もう、蓋を閉じる事は出来なくなっていたから。
「好きです。」
俺はセイランさんに、そう伝える。
声は、微かに震えていた。
反応が怖かった。
拒絶されるだろうと思う。
それでも夢見ずにはいられない。
もしかして、受け入れてくれないだろうか、と。
そんな事を夢見る自分がバカに思えてきて、でも期待は止められなくて。
グルグル廻る思考に、俺は俯いた。
「僕は男ですよ?」
「・・・っ。」
思わず息を呑んだ。
何を当たり前のことを言ってるのだろう?
確かにセイランさんは綺麗だけど、女性とは思わない。
反射的に顔を上げた俺の目には、冷たいセイランさんの視線。
拒絶の意を取って、息を呑む。
それでも問いには答えないといけないと思った。
「知ってます。」
答えた俺に、セイランさんが近寄ってくる。
恐怖に俯いた俺に上を向かせて・・・。
セイランさんは俺にキスをした。
口付けられて、俺は目を見開いた。
まさかそんな反応が返ってくるとは思ってなかった。
クスリと、
いつものように綺麗な笑みを浮かべながらセイランさんの顔が離れていく。
それを残念に思いながら見送って、俺は赤くなった。
(残念だなんて・・・。)
赤くなった俺を見て、セイランさんはクスっともう一度笑みを漏らした。
それがやっぱり綺麗で、見とれてしまう。
目が離せない。
ジッと凝視していると、もう一度セイランさんは俺にキスをした。
セイランさんの青い瞳が目の前にある。
視線をそらせないままでいる俺に、セイランさんのキスは深くなった。
表情は変わらない。
目って閉じるべきなのかな、と思いながら、
やっぱりもったいなくて目が離せない。
そんな事を思っていると、床に組み敷かれた。
衝撃は無かった。
セイランさんの腕が背中に回ってて、衝撃を和らげてくれたから。
だけど。
何故押し倒されているのかが、まったく分からなかった。
「???」
「本当に貴方は面白い人ですね。」
褒め言葉かどうか悩むような言葉を俺に投げて、
セイランさんはまたキスをした。
2度目のキスと同じ深いキス。
舌を絡められ、吸われ、力が抜けていく。
上顎を舐められて、ビクっと体が震えた。
そうやって俺の火を目覚めさせながら、
セイランさんのその手は俺の服を脱がせていく。
「セイランさん・・・!」
そこで、ようやく何をするつもりか分かった俺は慌てて制止の声を上げた。
何、が頭の中を走って頬が熱を持った。
「そんな顔で呼ばれたら止められませんよ?」
キスを止めたセイランさんがクスクス笑って言う。
そして、俺の胸を触った。
「・・・あ・・・ぁ・・・ん・・・。」
「いい感性を持ってますね・・・。」
女じゃないのに、と思っても声は抑えられなかった。
反射的に目を瞑った俺に、意地悪なセイランさんの声が落ちた。
薄く目を開くと、けど、その目は優しくて。
からかわれているのではないと分かった。
初めて正面から向き合えた気がして、
嬉しくてセイランさんに抱きつくと、
辛うじて肩にかかっていたシャツが脱げた。
上半身剥き出しになって赤くなる。
そんな俺にクスっとまた笑ってセイランさんは胸に触れた。
左手で俺の右胸の突起を弄り、左胸には舌を這わせ、
その間に、下衣を剥ぎ取りにかかる。
器用だな、などと思って、抵抗など忘れていた。
そのせいか、俺の下衣はあっというまに剥ぎ取られ、俺は全裸にされた。
セイランさんの服はほとんど乱れる事無く。
なのに俺は、シャツ一枚纏ってなくて。
恥ずかしくて身をすくめた俺の胸に、セイランさんが歯を立てた。
「っ・・・。」
痛みに微かに息を呑んだ。
けど、セイランさんが再びそこを舐めると、傷みは快感に摩り替わった。
右胸への愛撫はいつの間にか止んでいた。
それに気付いたのは普段触れもしない窪みに、
その左手が這わされたからだ。
ツプリと少しの痛みを伴って何かが入ってきた。
「・・・ッ。」
息を詰めたのはほとんど反射だった。
そんな俺にセイランさんは慰めるようにキスすると、
右手で俺の中心を捉えた。
指の全てが、まるで別の生き物のように蠢く。
それが眠った快感を目覚めさせていく。
根元から徐々に追い上げるように触れいく。
体が無意識に強張る。
足を突っ張らせて、セイランさんの頭を抱きこんだら、
胸の突起をペロリと舐められた。
それが、また俺を追い上げる。
「は・・・ぁ・・・ん・・・っ・・・。」
甘い声が部屋を支配する。
まるで俺の声じゃないみたいだ。
そんな事を頭の隅で考えている間にも愛撫は続けられる。
「や・・・ぁ・・・ッ。」
セイランさんの指が俺のモノの先端をグリっと強めに愛撫した瞬間、
体に電流が走って俺は白濁を吐き出した。
ビクっと体が硬直して、次に力を失った。
体を動かすのが億劫だった。
心地よい睡魔にまどろみかけた俺の窪みに、
セイランさんの指が増やされる。
そういえばまだ中に入ったままだったと再びその指を自覚しても、
もう体は強張らなかった。
むしろ、押し広げるようなその動きに、感じやすい体は反応を返す。
「ふ・・・ッ・・・あ・・・っ。」
解きほぐされた俺の窪みから指が抜かれた。
変わりにセイランさんのモノが入ってきた。
「っ・・・は・・・ふ・・・ッ・・・っっ。」
指との圧迫感の違いに息を詰めた俺のモノにセイランさんが手を這わせた。
その瞬間、快感が走り圧迫感がましになった。
息を吐いた俺を、その瞬間を逃さずセイランさんのものが貫いた。
「あ・・・ァ・・・ふ・・・ハ・・・ぁ・・・。」
「僕も、貴方が好きですよ、ランディ様。」
抽送を初めながら、耳元でセイランさんが囁いて。
俺はその言葉と、動きに翻弄される。
それでも必死に、もう逃さないようにその背に手を回した。
するとクスっと、こんな時でも綺麗な笑みをセイランさんは浮かべて。
それを見届けた後、俺はその背に手を回したまま渦の中へ放り出された。
胸の中には、充実感だけがあった。
-パンドラの箱の底に眠るは、希望-
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と言う訳で終わりました、30のお題。
最後の最後にエロを残したのは失敗でした。
エロ3連チャン・・・やたら疲れましたよ。(汗)
とりあえず、今回の私のお題はここで終了です。
思えば、結構長い間ですね。
少し感慨深かったり。
全てを読んでくださった方も、ノーマルオンリーなかたも、BLオンリーな方も、
お付き合い、ありがとうございました。
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