二人
月が世界を支配する頃。
ロザリアは、森の湖で一人泣いていた。
ガサリ、音がする。
かすかなその音に気付かず、ロザリアは泣き続けていた。
以前泣いたのはいつの事だろう?
他人事のように思いながら、けれど、涙は止まらなかった。
「ロザリア。」
名前を呼ばれてビクリとする。
声は、望んだ人のもの。
けれど・・・。
一瞬の迷いを経て、ロザリアは振り返った。
そこにあったゼフェルの瞳には、安堵と迷いがあった。
「ゼフェル様・・・。」
どうしてだろう?
同情しているのだろうか?
自分はそこまで哀れ?
そこまで考えて、ロザリアは自虐的に微笑んだ。
「同情していらっしゃるの?」
考えていた事をそのまま口にする。
涙はいつの間にか止まっていた。
「そんなんじゃねぇよ。」
乱暴に言って、ゼフェルがロザリアの隣に腰掛けた。
らしくもなく、一つ溜め息をつく。
「いいか、ロザリア?人の話は最後まで聞けよ。」
突然ロザリアを抱きしめ、ゼフェルが言った。
そう、あの言葉には続きがあった。
言い辛くなってしまった言葉を、ロザリアの耳元で囁いた。
『用がないときはくるな。でも、おめぇの話なら、どんなくだらない事だって聞いてやる。』
彼女の話なら彼にとって重要な用事だと。
そう言いたかったのだ。
そう言われて、ロザリアの頬が紅潮した。
翳り無い微笑が浮かぶ。
月が二人を見守っていた。
ゼフェルの言葉はロザリアにとって棘にも癒しにもなる・・・。
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3人称です。
嫌いな人→不器用な奴→二人といった始点の変わる話は、
前々から書いてみたいと思ってました。
今度は同じ場面の違う視点からとか書いてみたいなぁとか。
2パターンほど書いてみたいです、本気で。(笑)
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