不器用な奴
最初は、大嫌いだった。
女王試験が始まって、聖地に二人の女王候補が来た。
金の女王候補アンジェリークと蒼の女王候補ロザリア。
戸惑いを隠せないでいるアンジェリーク。
悠然と微笑むロザリア。
正反対の女王候補達。
最初、俺の目が行ったのはアンジェリークだった。
アンジェリークの戸惑いは、かつて俺の感じたそれと酷似していた。
けれど、やがて、アイツが試験に慣れるころ、俺とは違うアイツから興味が消えた。
確かそんな時だった。
ロザリアに目がいったのは。
偉そうな女。
そう思ってたアイツへの認識が変わったのは、とある日の曜日。
優しげに子供達へ向かって微笑むアイツがいた。
『子供なんて嫌いですわ。』
声をかけた俺に、アイツは言った。
だけど、その顔は紅くなっていて。
俺はそれが嘘だと、すぐにわかった。
不器用な奴。
そう思った。
やがて、アイツの優しさをしる。
『こんな事も出来ないの!!』
アンジェリークしか見てなかった頃なら、確実に腹を立てただろうセリフ。
それでも、口でそう言いながら、アイツはアンジェリークに色々教えていく。
不器用な優しさ。
今までの態度が、虚勢であったことを知った。
女王候補として育てられた優しい少女。
プライドと優しさ。
だから、あんな風にしか出来ないのだろう。
きっと、泣くことさえ一人でするのだろうと思った。
そして、今日。
「用が無いときは来るな」
俺の言葉に、ロザリアの目から涙が零れる。
どんなに寂しくても、決して人前では涙を見せなかったアイツ。
なのに、俺が泣かせてしまった。
泣かせたいわけじゃなかったのに。
「ロザリア?」
驚いて名前を呼ぶと、アイツはムリに笑って見せた。
その姿が痛々しい。
「ロザリア!」
踵を返したアイツ。
呼んでも振り向かなかった。
呆然と、ロザリアが去っていった方を見る。
「クソッ」
数瞬の後、俺は、駆け出した。
一人で泣いているであろう、アイツを探すために。
その涙を、止めるために。
|
今度はゼフェル視点です。
まだ、コチラのほうが書きやすかったですね。
タイトルはゼフェルから見たロザリアイメージなのですが・・・。
十分貴方も不器用です、ゼフェル。(笑)
|