特別な日



「パパ〜!」

聞きなれた声に呼ばれて振り返る。

そこに居たのは、3番目の娘。

「ミーナ。これから遊びに行くのかい?」

まだ学生でない娘の仕事は遊ぶ事だった。

「ううん、今日は特別だからね?お家に帰るの。」

首を傾げて言う娘は、とても愛らしい。

「特別?」

ミーナの言葉に引っかかって聞き返すと、ミーナは必死に首を横に振った。

「うん、特別。でも、パパには教えちゃダメってルネお姉ちゃんが。」

きっと、ルネは、そう言うことさえもいけないと言いたかったのだろうが、

ミーナには伝わっていなかったようだ。

それにしても、今日は何かの記念日だろうか?

結婚記念日はもう過ぎたし、子供の誕生日も明日だし・・・。

そんな取り止めの無い事を考えていると、隣を、女の子が駆け抜けていく。

「シャオ!?」

一番下の娘は、呼ばれてようやく気付いたらしい。

ぴたっと止まると振り返った。

「お父さん・・・ミーナ姉さんも?」

「何処かへお出かけかい?」

ミーナよりも随分としっかりしたシャオは首を横に振った。

「今日は特別なの。」

呪文のような言葉。

「今日は、だから私がお買い物へ行くの。」

少しそそっかしいミーナよりは・・・と考えた結果なのだろうか?

「そうか・・・二人とも気をつけるんだよ?」

そう言って娘達と別れて、仕事納めへと向かう。

何が特別なのかは、やっぱり思い出せなかった。



「あなた、一緒に帰りましょうか?」

優しい声に振り返ると、そこには最愛の人が居た。

彼−アムラームの妻、モニカである。

彼女とはウルグもショルグも同じで。

若い頃は、それさえも運命だと喜んだ記憶がある。

もっとも、運命は自分で選ぶものだと思うけれど・・・。

仕事納めから二人並んで家路につく。

「ねぇ、モニカ?今日は何かあるの?」

朝から疑問を持っていたことをモニカに尋ねる。

「?どうして?」

逆に不思議そうに尋ねられて、アムラームは今朝の事を説明した。

そうすると、モニカは、思い当たったらしい。

クスクスと笑い、けれど、教えてくれなかった。



パーン。

家に入った瞬間、クラッカーの音が鳴り響いた。

宙を舞う色とりどりの紙。

「誕生日おめでとう、母さん。」

今年成人したばかりの一番上の息子、ユリスが声をかける。

そうだ・・・!

「ごめん、モニカ・・・!僕、すっかり忘れてて・・・。」

そうだ、今日はモニカの誕生日なのだ。

毎年、デートをし、プレゼントを渡す。

それが今日の恒例行事だった。

モニカは少し苦笑した。

「お誕生日おめでとう、お父さん。」

ルネの不意の言葉に振り向く。

「えっ?」

驚いた顔の僕に、モニカはますます苦笑した。

「『えっ』じゃないわ?今日はあなたの誕生日でもあるのよ?」

モニカの誕生日さえ忘れるほど、最近は忙しくて。

それなのに、自分の誕生日なんて覚えてられない・・・と思う。

モニカの苦笑は、自分の誕生日を忘れるアムラームに対してのものだったらしい。

シーダがモニカに、リンがアムラームにプレゼントを渡す。

そう、あるいは。

運命は自分で選ぶものだけれど、こんな運命なら神が定めたものでもかまわないと思った。






プレイ日記のオーシャン家のある日でした♪
普通、自分の誕生日は忘れないだろうと思われるかもしれませんが・・・
それ以上に、アムラームにおいてモニカ嬢の誕生日を忘れる事は絶対ありません。(笑)
あと、子供達のも。
それ以外は結構忘れるかも。(笑)
姉の誕生日とか、「えっ?今日だったの?」みたいな感じで。
ウルグ長選挙とか、議会とかも。
いいのか、こんな奴が議員で!