雨の休日



大きな木の下で、一人の青年が待っていた。

「アリオス〜!」

その事が嬉しくて、コレットは思わず名を呼びながら駆け出した。

その体が、傾く。

「きゃっ。」

衝撃を予測して目を閉じるが、来るべき衝撃は何時までたっても来なかった。

「?」

不思議に思って目を開けると、目の前で地面が止まっている。

「いいかげん自分で立てよ?」

声がすぐ側で聞こえて、コレットは振り向いた。

アリオスの顔が視界に入る。

そして、気付いた。

アリオスが支えてくれている事に。

「ごめんなさい・・・!」

赤面しつつ謝って、コレットは自分の足で立つ。

「ったく、危なっかしいな。」

そういって苦笑したアリオスにコレットはますます赤面しながら俯く。

「俺は逃げやしないぜ?もう二度と・・・。」

囁くような言葉は、それが真実だと教えるように真剣だった。

不意に、温かい風が吹く。

アリオスは少し不機嫌な顔で空を見上げる。

「?」

そのアリオスを不思議そうにコレットが見つめる。

「アンジェリーク、お前、今日はもう帰れ。」

「いやよ・・・!今来たばっかりなのに・・・!」

どう会っても退こうとしないアンジェリークに、アリオスが溜め息をつく。

再び温かい風が吹いた。

ちっとアリオスは舌打ちすると、コレットの手を取る。

「走れ、アンジェリーク!」

「えっ?」

意味もわからず走り出す。

着いたのは天使の広場。

それでもアリオスは足を止めることなく走る。

雨が降り出したのと、喫茶店に入るのは同時だった。

「・・・!」

「やっぱり降ってきたか。」

軽く息を吐き出し言ったアリオスは、解っていた様である。

「アリオス・・・天気がわかるの?」

コレットの質問にアリオスは肩をすくめた。

「生暖かい風が吹いただろ?」

そのおかげでわかったのだという。

「しばらく止みそうにない・・・か。」

だから早く帰れといったのに、と恨み言のような事を呟いて、アリオスは溜め息をついた。

しゅんっとコレットがうなだれる。

「まぁ、ゆっくり茶でも飲んでいくか。」

苦笑しながら言ったアリオスに、コレットは笑顔になった。

「そういえば、前にもこんなことがあったよな?」

あれは、まだ二人が仲間として旅をしていた頃だ。

突然のスコールに雨宿りをしていると、アリオスが来たのだった。

「お前って、もしかして雨女か?」

からかうようにアリオスが言う。

「アリオスこそ、雨男なんじゃない?」

そして、二人そろって吹きだした。

そして、会話に花が咲く。

雨女もいいかも知れない・・・。

コレットはそっとそう思った。






姫香様より頂いたネタです。
お題は『天気予報』でした。
ということで、アリオスに天気予報をさせてみたり。(笑)
アリオスって旅慣れしてそうだし、なら天気予報ぐらい出来るかなって。(爆)
この話は勝手に姫香様に捧げさせて貰いますv
素敵なネタをありがとうございますvv