明日への扉



女王になって何度目かの季節が巡り、私たちはは再びであった。



愕然とした。

外と聖地との時の流が違うことは知っていた。

けれど、実感はなかった。

外の者と触れ合う事はなかったから。

しかし、今。

最後にあった夜とは明らかに年を重ねたエルンストを見て、

アンジェリークは緑の瞳を見開いた。

そして、気付いた。

自分達の関係の危さを。

「お話があります。」

何時になく厳しい顔をして言い出したのは彼女。

それを、以前は見せなかった穏やかな笑みで受けたのはエルンスト。

罪悪感を感じながら、けれど、アンジェリークは言葉を発した。

「別れましょう。」

滑稽な言葉だと思った。

別れるも何も、自分達は付き合っているのだろうか?

確かに好きだと愛の言葉を交わした。

二人で出かけたりもした。

でも、ただ、それだけだ・・・。

言葉にしてしまえば簡単な、飾り気のない日々。

けれど、彼女にとっては何よりも大切な・・・。

「どうしてですか?」

淡々と、エルンストが言う。

「私以外に好きな人が出来た?」

その言葉にアンジェリークは慌てて首を横に振った。

そんな事あるはずない。

あるいは、頷けばそれで終わったかも知れないが、それでも、その嘘だけはつけなかった。

「では、なぜ?」

一歩も退かないエルンストに、アンジェリークはただ、首を横に振るだけだった。

「アンジェリーク!」

名を呼ばれて、ハッと顔をあげると、エルンストの視線にあたった。

嘘はつけない・・・。

「リスクが大きすぎるから・・・。」

声は震えていた。

一言出してしまえば後は止まらない。

言葉が次から次へと溢れていく・・・。

「エルンストが年をとっても、私は年を取らない。

 私が女王をやめるときに、あなたは居ない・・・。」

それは、半分だけ真実。

けれど、それよりも何よりも・・・。

「あなただって、きっと他の誰かを好きになる。

 リスクのある私よりも、もっとすてきな、普通の女の子を!」

耐えられなかった、そんな日が来るのは。

だから終わらそうと思った。

普通の女の子と普通の幸せを、それがエルンストの幸せだとそうも思った・・・。

涙があふれた。

ゆっくりと一滴の涙が頬を伝う。

エルンストは苦笑して、アンジェリークの涙を拭った。

「そんな日は来ませんよ。」

ゆっくりとエルンストが微笑を浮かべる。

「私が好きなのは普通の女の子なんですから。」

アンジェリークは目を見開いた。

「私は女王よ・・・?」

別に敬って欲しいわけではない。

けれど、真実は変えられないのだ。

「それでも、心は普通の女の子でしょう?」

それに、とエルンストは一呼吸置いて続けた。

「好きだと私が言った時、貴女は女王でしたよ?私がリスクを分かってないとでも?」

分かってないのは彼女の方だった。

確かに、エルンストは分かっていたのだろう。

「まぁ、そのリスクとももうすぐお別れですけどね。」

話が読めなくてアンジェークは首をかしげた。

「この3年間、私が何もしていなかったと思いますか?」

問いに首を横に振る。

けれど、何をしたかは見当がつかなかった。

「新宇宙への赴任が決まりました。帰ったら貴女の元で働けます。」

アンジェリークはその言葉に思わずエルンストに抱きついた。

無事に帰れるという保障はなかった。

ここは、アルカディアはそんな場所だった。

それでも、それを真実にしてみせる。

二人の新たなる物語への扉なのだから。






リク品です。
なんだろう?エルンストさんの性格が悪い気が・・・。
リモージュちゃんとコレットちゃんどちらでも良いとの事でしたので、
コレットちゃんに。
リモージュちゃん書いたことが有ったので。
あの話、最初はエルンスト×コレットだったということは秘密。(笑)
タイトルはどこぞで聞いたような気がしますが、
気のせいです。(笑)
この話はみきぞう様に捧げます。