星の降る夜



それは、ある夜の事だった。

一人の少女が、ただ、空を見ていた。

緑の双眸に映る、数多の星達。

星は、変わることなく瞬いている。

「アンジェリーク。」

男が少女を呼んだ。

少女が振り向く。

その先にあるのは、銀の髪の男。

その髪が月に照らされるのを見ながら、アンジェリークは微笑んだ。

「アリオス・・・。」

その男は、彼女の何よりも大切なものだった。

「何してんだ?」

アリオスが問う。

それに一瞬沈黙して、アンジェリークは笑みを浮かべた。

「星をね・・・見ていたの。」

言って、コレットは再び空を見上げた。

嘘ではない。

けれど、真実にも遠い言葉・・・。

誤魔化してしまった自分に苦笑して、アリオスに向き直った。

「思い出していたの、皆様の事を。」

皆様・・・。

守護聖や女王、彼女が育てた新しい宇宙・・・。

それら全てを捨て、彼女は彼とともに旅を始めた。

「あいつらか・・・悪い奴らじゃなかったな。」

理由があって敵対していたけど、けれど、彼らの事をアリオスはそう表していた。

「えぇ。」

その事が嬉しくて、アンジェリークは微笑んだ。





最終決戦の時、傷ついたアリオスを前に旅をしようといったのは彼女だった。

「なにを馬鹿な・・・。我は皇帝、そして、汝は女王。我らは敵対しているのだぞ?」

レヴィアスの顔でそう言ったアリオスに彼女は微笑んだ。

「すべて捨てていきましょう?そうすれば、何も関係ない・・・。」

女王の座も、皇帝の名も、全て・・・。

「捨てる・・・?」

「えぇ、女王の座もなにもかも・・・。」

過去さえも。

全てを捨ててもかまわないと思った。

全てを捨てても救いたいと思った。

全てを捨てても、共に、側にいたいと思った。

「女王の座・・・さえも・・・?」

呟くように、尋ねるようにいったアリオスにアンジェリークは頷いた。

「2人でもう一度始めましょう?」

二人の紡ぐ物語を。

言ってアリオスを抱きしめた。

そこに居たのはアリオスだった。






思い出す。

全てを捨てたあの日を。

一言も残すことさえ出来なかったけれど・・・。

「アリオス、行きましょう?」

アリオスの手を取って前へ歩き出す。

後ろは振り向かない。

そう、それが彼女の選んだ道なのだから。






イメージは七夕です。
今さらですがね〜、七夕。
でも、まぁ、旧暦の七夕ということでUP。
天レクの希望EDを入れてみました。