恋することはやめられない



最近の聖地は晴れが多い。

それは、女王の力が安定しているという事だった。

女王・・・。

最近即位したばかりの女王はかなり優秀だった。

その名をロザリアという。

即位したてにも関わらず、執務を完璧にこなす麗しの女王。

そう、彼女の補佐官となった少女の方が実質上補佐されているといったしだいだ。

けれど、ゼフェルはロザリアが心配だった。

強がりで、完璧主義な彼女は、よく無理をする。

本当は、ただの弱い少女なのに、周りはその完璧さに目を囚われ、本質を見誤る。

はぁ、と一つ溜め息をつき、ゼフェルは顔をあげた。

悩むのはらしくないと思う。

そして、思いついた一つの事・・・。

その考えにニヤリと笑みを浮かべ、ゼフェルは立ち上がった。

そして、歩き出す。

青の女王の元へと。





扉が叩かれ、執務中だったロザリアは顔をあげた。

「どうぞ。」

堅い、どこか冷たくさえ感じる女王の声に扉が開く。

入ってきたのは鋼の守護聖ゼフェルだった。

「ゼフェル様?」

口調が少し和らぐ。

その表情は女王ではなく、一人の少女のものだった。

「ロザリア、話がある。ちょっといいか?」

辺りに誰も居ない事を確認して、ゼフェルが言う。

その言葉にロザリアは頷いた。

「えぇ、かまいませんわ。」

書類を横に除け、ゼフェルの顔を見返す。

紅と蒼の視線が交わった。

「お前に言っときたい事があって。」

ゼフェルがニヤリと笑む。

どこか不穏気なその表情に、ロザリアは首をかしげた。

「好きだぜ。」

躊躇いもなくゼフェルがいう。

あまりに唐突な言葉。

それに、少し紅くなり・・・。

けれど、現実の壁にあたった。

「私は女王ですわ。」

言葉は真実。

女王候補だったころならいざ知らず、女王となった今、その言葉に答える事は出来なかった。

苦しげな表情のロザリアに、けれど、ゼフェルは笑っていた。

「そんな事、言われねえでも分かってるぜ?でもよ・・・。」

さっき考えていた事を、ロザリアに伝える。

「女王と守護聖が恋しちゃいけないなんて決まりないよな?」

確かに、女王と守護聖が結ばれたという話は聞いた事が無かった。

けれど、結ばれてはいけないという決まりが無いのも事実だ。

それに、たとえそんな決まりが有っても、心までは縛れない。

無いなら作ればいい・・・。

それがゼフェルの考えであり、答えだった。

「無いなら作ればいい。女王と守護聖が幸せになったっていう前例をな。」

それはあまりに無茶苦茶な言葉で・・・。

けれど、ロザリアにとっては救いの言葉だった。

「女王が恋をしても良いと思いますか?」

震える声で尋ねる。

「あぁ、作ろうぜ?俺達で前例を。」

迷いもなく言ったゼフェルにロザリアが抱きつく。

そして、そっと耳元で囁いた。

ゼフェルと共に歩むための、最初の言葉を・・・。






リクエスト、ゼフェロザの方にさせて頂きました♪
まぁ、こんな終わり方もありかな?とか
ゼフェル様ならきっと女王になっても関係ないかと思ってこんな話に!?
姫香様に捧げます♪
タイトルは姫香様につけて頂きました♪
素敵なタイトルをありがとうございます☆
















































聖地に新しい鋼の守護聖が来た。

今度の少年は随分素直そうだと思いながら、マルセルは少年を見た。

そして思い出す。

つい先日この地を去った、前任の鋼の守護聖と、青の女王の事を。

先に力を失ったのは女王だった。

けれど、女王は聖地に留まった。

前任の鋼の守護聖が力を失うその日まで。

(まったくやってくれるよ・・・。)

今はもう、青の女王の真実の姿を事を知るのは、聖地では彼だけだった。

けれど、青の女王と鋼の守護聖の物語はきっといつまでも聖地で語られる事だろう・・・。



Fin