不安



ずっと・・・不安だった。

女王になって、恋をするなんて思ってなかった。

やがてそれは実を結び・・・私たちは恋人同士になった。

けれど、それは。

ひどくリスクのあるものだった。

その恋を知るのは彼女ら以外ではロザリア。

他のものに知られてはならない。

もちろん、それも重かったけど・・・。

なによりも重いのは、いつ別れが来るかわからないことだった。



急に扉が開く。

ノックも忘れて飛び込んできたのはオリヴィエ。

彼女の恋人である。

その後ろにはロザリアが苦笑に近い笑みを浮かべて立っている。

「アンジェリーク、出かけよう。」

どうしたのだろう・・・と不安になる。

普段なら、決してノックという作法を忘れる人ではないのに・・・。

「オリヴィエ?」

名を呼びながらロザリアを見ると、ロザリアは穏やかな笑みを浮かべた。

「いってらっしゃい、アンジェリーク。」

ロザリアは何もかも知っているらしい・・・。

オリヴィエはロザリアに笑顔を送ると、アンジェリークの手を取り出て行った。



その日は目まぐるしい一日だった。

その後すぐに着替えて、遊園地へ行き一日中遊んだ。

夜になって素敵なレストランで食事をした。

そして今は・・・美しい夜景を見ている最中である。

「きれ〜い。」

思わず叫んだアンジェリークに、オリヴィエは穏やかに微笑んだ。

「お気に召しましたか?姫君・・・。」

後ろから耳元で囁かれアンジェリークは紅くなる。

いつの間にかすぐ後ろにオリヴィエが立っていた。

「いつも笑顔でいて?」

不意に、真剣に、笑みを消して言ったオリヴィエを見る。

「私の力が無くなったらあんたを攫ってあげる。

 あんたの力が無くなったら、私と逃げよう?だから安心していいんだよ。」

あぁ、そうか・・・。

ようやく分かった。

ロザリアに不安の事を少し言った事がある。

たぶん、ロザリアがそれをオリヴィエにいったのだろう・・・。

ゆっくりと、涙が零れてゆく。

不安が雪のように静かに溶けていった






「私の力が無くなったらあんたを攫ってあげる。
 あんたの力が無くなったら、私と逃げよう?だから安心していいんだよ。」
このセリフを言わすために書いた話です。(笑)
ランディ様が言ったなら間違いなく着いて行くんですが。(オイ)
そして、恐ろしく短いです。
欲求を満たしているためオマケもなしだし。(苦笑)