青い傘
雨が降っていた。
サァーと静かな音を立てて、飛空都市の雨は降る。
決して強くなく、まるで、子守唄のようにさえ聞こえる音を立てながら。
その日、飛空都市は雨だった。
いつものように優しく降る雨に、ため息をつく少女が一人・・・。
女王候補のアンジェリーク・リモージュである。
「こんな事なら、傘を持って繰ればよかった。」
金の髪が雨に濡れ、一層艶やかに光を放っている。
ため息をつきたい気持ちで空を見上げるが、雨は一向に止みそうにない。
「予報,ちゃんと見て来ればよかったな。」
言ってもしょうがないことを言ってしまう。
飛空都市では、雨は予報によってもたらされる。
予報が外れることは絶対に無かった。
けれど・・・。
「つい、見忘れちゃうのよね。」
飛空都市に来て、日が浅いせいかもしれない。
雨宿りをしながら、そんな事を考える。
急に降ってきた雨に、占いの館で雨宿りしたのはよかったが・・・。
こうなったら、濡れて返ろうか?
ため息をついてそんなことを考える。
誰かに見つかりでもしたら大変だが・・・。
「アンジェリーク?」
名前を呼ばれて顔を上げる。
と、そこにはランディの姿があった。
「どうしたんだい、こんな所で?」
「えっ・・・と・・・傘を忘れちゃって・・・。」
どうしよう、と悩んだ末、正直に話す。
顔が熱かった。
「そっか、それは大変だね・・・そうだ!」
笑われるかと思ったが、ランディは笑わなかった。
「よかったら、寮まで送るよ。」
「でも・・・ご迷惑じゃ・・・。」
俯いて言ったアンジェリークに、ランディは、屈託の無い笑顔を見せた。
「迷惑なんかじゃないさ。むしろ、嬉しいよ。」
ランディの言葉に嘘はないようだった。
もっとも、頼られることが・・・という意味だろうが・・・。
「それじゃあ・・・お言葉に甘えて・・・。」
アンジェリークが恥ずかしそうに言うと、ランディは傘をアンジェリークの方に差し出した。
小さな心遣いが嬉しかった。
寮への道のりはひどく短く感じられた。
二人の時が終わってしまうのがひどく残念に思えた。
「ありがとうございました。」
アンジェリークが微笑みながら言うと、ランディも笑顔を返した。
「いや、気にしないでいいよ。君が濡れないでよかった。」
その言葉を聞いて、思い出す。
そういえば、相合傘だったのだ・・・。
「もう少し、君と一緒に居たかったけどね。」
残念そうにいうランディに目を見開く。
「えっ・・・?」
「あっ、いや・・・。」
少し赤くなったランディに、アンジェリークも赤くなって俯く。
都合よく解釈してしまいそうだった。
「ランディ様、お茶、飲んでいきませんか?」
行ってから唐突だったことに気づく。
「あっ・・・と、その、雨に濡れちゃったし、寒くないかなって・・・。」
怪訝そうな顔をしたランディに、言い訳のように付け足す。
「それじゃ、お言葉に甘えて。」
しどろもどろの言い訳に、けれど、ランディは納得したようだった。
笑顔で答えたランディに嬉しくなって。
とびっきりおいしいお茶をいれようと思った。
ランディ様と金髪のアンジェリークのお話です。
梅雨に入った頃に書こうと思ってました。
やっぱり、梅雨といったら相合傘でしょう。(笑)
まぁ、この話は秋の終わり位のイメージですけど・・・。
梅雨が終わる前に書けてよかったです。
で、内容は・・・。
訳がわからないのはいつもの事です。(開き直り)
相合傘のイメージさえわかればOKです。(オイ)
タイトルはランディ様の傘の色のイメージ。
なんとなく青かな?って。
サブタイトルは雨の日曜日。(爆)
日曜日じゃないですけど。(笑)
・・・相手、リュミエール様でも良かったかも・・・とか思い始める今日この頃。
リュミエール様の話は何時になるやら・・・。(爆)
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