サクラサク
はらはらと舞う薄紅色の花を見て、なぜか悲しくなった。
初めてあったのも・・・そう、確か桜の花が咲く頃だった。
女王候補として連れてこられたその少女は、どこか頼りない感じで・・・。
彼は、密かに彼女を心配し・・・そして、女王になるのはもう一人の少女だと思った。
思えば、その頃からこの恋は初めっていたのかもしれない・・・。
気が付けば、目を離せなくなっていた・・・。
やがて女王試験は終わりを告げ、少女は女王になった。
「早いものだな・・・。」
思わず呟く。
彼女が女王になって、初めての春が来た。
桜の花に彼女を重ね、切なくなる。
「オスカー様どうしたんですか?溜め息なんてついて。」
後ろから抱きつかれ、振り向くと彼女が居た。
「アンジェリーク・・・。」
彼女の亜麻色の髪が、日に透けて金のように見える。
「桜を・・・見てたんだ。」
「桜を・・・?」
アンジェリークは少し驚いた。
彼が本物の花を愛でる趣味があるとは知らなかった。
女性という名の花ならともかく・・・。
「俺だって、花を見ることぐらいあるさ。」
肩をすくめて言ったオスカーは、いつもの、どこか人をからかうような様子は無くて・・・。
ひどく、切なげだった。
アンジェリークの表情が曇ったのを見て、オスカーは彼女に謝った。
「すまない・・・君にそんな顔をさせるつもりじゃなかったんだ・・・。ただ・・・。」
オスカーはもう一度溜め息をつくと、ポツリと語った。
「ただ・・・桜を見ていると・・・君が何処かへ行ってしまいそうな気がして・・・。」
アンジェリークの双眸が見開かれる。
オスカーでも不安になることはあるのだ・・・。
「自分勝手なことは分かっている・・・。
俺があの時言えなかった為に君が女王になってしまったことも。けれど・・・」
オスカーは女王試験の時を思い出す。
目が離せなくなって・・・けれど言えなくて・・・。
そして彼女は女王になり、オスカーから離れていった。
離れて・・・分かった。彼女が何よりも愛しいと。
「何処にも・・・行かないでくれ。」
切なげなオスカーのうめきを聞いて、アンジェリークは微笑み、そして、オスカーを抱きしめた。
「どこにもいきません・・・。」
オスカーの不安はアンジェリークのものでもあった。
たくさんの女性に愛される人だから・・・。
だから、いつか自分の傍を離れていってしまうかも知れない・・・と。
「来年も、その次の年も、ずっとずっと二人で桜を見ましょう?」
アンジェリークの言葉にオスカーは顔をあがげ・・・そして、ようやく微笑んだ。
「あぁ・・・。」
ずっとずっと、二人でそうして時を重ねていこう・・・。
時には不安になるかもしれない。でも、自分達なら大丈夫だ。
さっきまでの不安は消え、オスカーはそんな事を思った。
アンジェリークを抱き寄せる。
「愛してる、アンジェリーク・・・。」
きっとそれは、ずっと変わらない思い・・・。
はらはらと舞う桜の花びら。
散る為が如く咲く、薄紅色の花。
その命は短く、全てが花開いたと思えば、次の瞬間には散り始める
その様子はひどく儚げで、物悲しく・・・けれど美しい。
・・・という事で、久々の更新です。
初のオスカー様もの。オスカー様ファンの人ごめんなさい。
オスカー様のいつものセリフは私には無理です。(苦笑)
春・・・という事で桜。
誰の話にしようか悩みました・・・が結局この二人に。
今回は、1行ごとに間を空けてみました。
少しは読みやすくなったでしょうか・・・?
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