天使の物語



『昔々、あるところに、二人のお姫様がいました。』



彼女は女王候補だった。

金の女王の、二人の女王候補の一人。

大地と同じ髪の色と、深い木々の色の瞳・・・。

穏やかな春の日差しを思い出す、穏やかな微笑み。

そんな彼女が、たまらなく愛しくて・・・。

けれど・・・彼女は女王になった・・・。



『昔々、あるところに二人のお姫様がいました。

 太陽の姫君と、大地の姫君。

 ある日、二人の母たる光の女王は、彼女達に告げます。

 後継者を選ぼうと思う・・・と。

 大地の姫君は、女王になるために頑張りました。

 彼女には大好きな騎士様が居て、
 
 頑張って女王になって、騎士様に思いを告げようと思ったのです。

 やがて大地の姫君が女王に決まりました。

 けれど、女王は決められた相手と結婚しなければならなかったのです。

 大地の姫君は嘆きました。

 こんな事のために、頑張ったのではない・・・と。』



小さな少女が、泣きそうな顔をしている。

「それで・・・お姫様はどうなったの?」

彼の愛娘は、緑色の瞳に涙をいっぱい浮かべて尋ねてきた。

ランディはそれに微笑を返す。

「女王様になったんだよ。」

昔を思い出して言う。茶色い髪の新しき宇宙の女王・・・。

答えを聞いた少女は泣き出した。

ランディは娘の緑の瞳を覗き込むと、ゆっくりと言った。

「泣くのは早いよ、エンジェ?」

不思議そうに見返してくる娘−エンジュを抱き上げると、ランディは続けて言った。

「このお話には、続きがあるんだ。」

まるで、秘密を教えるようにそっと言う。

「続き?」

目を丸くした娘に、ランディはもったいぶるように少し間を置いて、お伽話を続けた。

「お姫様が好きだった騎士様もね、実は、お姫様が好きだったんだ。」

女王試験を思い出す。そして、娘が泣き出す前に話を続ける。

「だからね、騎士様はお姫様を攫って逃げたんだよ。」

「騎士様とお姫様、逃げちゃったの?」

「そうだよ。」

言葉に頷いたランディに、不思議そうに、エンジュが尋ねる。

「それで、どうなったの?」

「もちろん、騎士様とお姫様は幸せに暮らしたそうだよ。」

正確には、暮らしている・・・だけど。

そう心の中で付け足して、ランディは娘に微笑んだ。

「めでたし、めでたし。」

ランディが締めくくると、エンジュはようやく笑った。

「あなた、エンジュ、ご飯よ〜。」

彼の最愛の人が呼んでいる。そう、彼の天使が・・・。

ふいに、幸せだな・・・とランディは思った。

物語は、めでたしめでたしだけど・・・彼らの話はまだ続くのだから。








・・・という事で、またランディ様の話です。
いや〜、何か不意に書きたくなっちゃって。(爆)
何となく、違った書き方にしてみたり・・・。
ランディ様の娘が出てきます。勝手に命名。(苦笑)
最初に、バットエンドっぽくして、逆転ハッピーエンドにしてみました。