女王候補たちのバレンタイン
「ねぇ、ロザリア・・・。」
唐突にアンジェリークが口を開いた。
「もうすぐバレンタインよね。」
それは、ある日の曜日の事だった。
とてもいい天気の日の曜日。
どこかへ行こうか・・・などと考えていた矢先だった。
突然アンジェリークが訪ねてきたのは。
部屋に招き入れると、そのまま真剣な・・・
どこか思いつめた表情で黙り込んだ彼女を少なからず心配していたのに。
ようやく、口を開いたかと思ったらそんな言葉である。
「は?」
思わず間の抜けた声ロザリアはで返してしまった。
そんな様子に気付かずにアンジェリークはもう一度繰り返した。
「だから、もうすぐバレンタインよねって。」
「あんた、何言ってるのよ。」
確かにバレンタインは近い。
近いが、突然アンジェリークがそんな事を言い出したのかロザリアには分からなかった。
「ロザリアはチョコあげないの・・・?」
不思議そうに聞いてくるアンジェリークに、ようやくアンジェリークの言いたい事が分かった。
つまり、一緒にチョコを作ろうというそういうことなのだろう。
「私達は、遊びに来ている訳ではないのよ!」
きつい口調で言ったロザリアを、アンジェリークは不思議そうな顔で見る。
「でも、ロザリア。
いつもお世話になっているのに何も差し上げないんじゃ、失礼じゃないかしら?」
正論ではあった。
「だから、ね。二人でチョコ、作りましょう?」
こうして、二人はチョコを作ることになったのである。
バレンタイン当日・・・。
二人は守護聖の執務室を周っていた。
もちろん、チョコを渡すためである。
おおかたのチョコを渡し終わり、残ったのは2つ。
アンジェリークが作ったチョコと、ロザリアが作ったチョコ、1つずつだ。
そして、残る守護聖は・・・ランディとルヴァだ。
ルヴァに先に渡しに行こう、とこの場に及んでまで言うアンジェリークを、
半ば強引にランディの執務室の前まで連れて来たのはいいのだが・・・。
「ほら、ランディ様にチョコを渡すんでしょう!」
先ほどからずっと、扉の前でもじもじしているアンジェリークに言う。
「だって、ロザリア。」
泣きそうな目でこちらを見るアンジェリークに、
けれど、ロザリアはにべもなくその背中を押した。
「きゃ・・・」
小さく声をあげて、転がるように執務室に入っていったアンジェリークにロザリアは続いた。
「ごきげんよう、ランディ様。」
少し紅くなって、俯いているアンジェリークをしり目に、ロザリアは優雅に挨拶をした。
「やぁ、アンジェリーク、ロザリア。」
ランディは、元気よく爽やかに、笑顔で挨拶を返す。
「こんにちは、ランディ様。」
ようやく、アンジェリークが挨拶をした。
その様子に、もう大丈夫だと思う。
「ランディ様、チョコレートはアンジェリークから貰ってください。」
その瞬間、アンジェリークがロザリアを振り向いた。
眼がが行かないでと語っている。
「それでは、失礼します、ランディ様。」
けれど、そんな視線に気付かぬふりで、ロザリアは二人に背を向け、執務室を出た。
自分から言い出したこととはいえ、結局一人でチョコを届ける事になってしまった。
その事実に、少しだけため息が出る。
(こんな事なら、先にルヴァ様の所へ届ければよかった・・・。)
一人で好きな人にチョコを届けるというその時になって、
ようやくロザリアはアンジェリークの気持ちが少し分かった。
ひどくドキドキする。
そんな事を考えている間に、ルヴァの執務室の前まで来てしまった。
どうしようかためらう・・・がここで引き返す訳にもいかない・・・。
勇気を出し、扉をたたく決意をしたその時だった。
「あ〜、ロザリア?」
独特ののんびりとした口調で、ルヴァが声をかけてきたのは。
ロザリアが何故自分の執務室の前に居るのかわからないといった様子だった。
「ごきげんよう、ルヴァ様。」
少し紅くなって、ロザリアはそれでも、挨拶をした。
「えぇ、こんにちわ、ロザリア。今日はどうしたのですか?」
問われて、返答に困った。
けれど、おずおずとチョコを取り出しそれを差し出す。
「チョコを渡しに来たのですわ。私とアンジェリークで作ったんです。」
ルヴァはチョコを受け取り、微笑を浮かべると礼を述べた。
受け取ってもらえてほっとする。
「お口に合うとよろしいのですが・・・。」
紅くなって言うロザリアを少し微笑ましくルヴァは思った。
「ありがとう、とても嬉しいですよ。」
ルヴァはもう一度礼を述べた。
「お礼といっては何ですが、これからお茶でもどうですか?」
ロザリアは小さく頷いた
女王候補たちのバレンタインは、こうして過ぎていった。
バレンタイン過ぎたのにバレンタインネタです。
(普通、こういうのはバレンタイン前に書くんじゃ・・・。)
そして、短いです。(しかも、即席・・・いつも駄文ですが、さらに駄文度が・・・。)
ははは・・・(笑ってごまかすな。)
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