オカリナの音が、聞こえた気がした。



Sound



「?どうしたのアンジェ?」

ぼんやりしている所に声をかけられて、私はビクリと声のしたほうを見た。
声の先には補佐官の衣装をまとったレイチェル。
かくいう私も女王の正装で身を包んでいる。

「もうすぐ陛下達がいらっしゃるよ?大丈夫?」
「大丈夫、なんでもないの、レイチェル。」

心配そうにこちらを見るレイチェルに微笑む。

今日、この宇宙で最初の守護聖たちがこの聖地に来る。
その式典に、私の故郷の『神鳥の宇宙』の女王陛下がいらっしゃるのだ。

失敗は出来ない。

そんな緊張感の中で、どうしても笑顔はぎこちなくなる。

もう一度、オカリナの音が聞こえた。

不思議に、緊張感が消えていった。
懐かしい人の腕に抱かれているような感覚。
微笑が自然に浮かぶ。

「久しぶり、アンジェリーク!」
「お久しぶりです、陛下。」

シャトルからリモージュ陛下とその補佐官のロザリア様、そして守護聖の方々が降り立つ。
皆様正装していらっしゃって、ピリリとした緊張感が包む。
それを壊したのはリモージュ陛下だった。

陛下は変わっていなかった。
そんな陛下を、守護聖の皆様が微笑みを浮かべ見ている。
なかには苦笑に近い笑みの方もいらっしゃる。

「陛下!」

リモージュ陛下を止めたのはロザリア様だった。
そのあまりの変わりの無さに、緊張していた自分が少しバカらしくなった。

「お久しぶりです、皆様。ようこそ、聖獣の宇宙へ。」

レイチェルが迎えの言葉を述べ、皆様を先導する。
私はその殿を務めた。

ピー。

また、オカリナの音が聞こえた。

私は振り向く。
誰が吹いているのかを確かめるために。
けれど・・・

けれど、その音の持ち主を見つけることは出来なかった。

レイチェルがこちらを見ているのに気づいて、私はなんでもないと軽く首を振った。
そして、今度こそ歩き出す。

ねぇ、もしかしてあなた?

心の中で呟く。
懐かしい人のことを思いながら。

その想いは、自分でも笑いたくなるほど夢に近くて。
胸の奥底に眠らせた、微かな希望で。
私は、泣きたい気持ちで笑った。

ねぇ、もしかしてあなた?
私のためにオカリナを吹いてくれたの?

答える声は、無かった。







相当前に書いた話だったりします。
懐かしいなぁ・・・(笑)
今見ると「・・・」って感じなのですが、
直しても直してもキリは無い気がするのでこのままでUPです。
ちなみに、久々にオマケがあったりしますので、
ハッピーED仕様が良い方はずずいっとどうぞ☆























答える声は、無かった。
それでもよかった。

オカリナの音を聞いたとき。
あの懐かしい音を聞いたとき。
どこかで、繋がっている気がした。

いつかオカリナを聞かせてもらったあの草原に似た場所で。
私は今もあなたを思う。

オカリナの音が、響いた。

風が吹いた。
私の背中を後押しするみたいに。

私はゆっくり後ろを向く。
希望を込めて。

振り向いた先には。
その先には、夢があった

私はいつも夢見たあなたの姿を認めて。
振り向いたときよりもゆっくりと笑みを作った。

おかえりなさい。

心の中で呟いて、何故か胸がいっぱいになった。
笑顔が涙に消える。

「何で泣くんだよ。」

苦笑に似た笑みでそういったあなたに、私は何もいえなかった。
あなたが私を抱きしめる。
懐かしい体温に身をゆだねて。

「おかえりなさい。」

私は、やっとその言葉を口にできた。