大地の見る夢
どうしてこんなに静かなんだろう?
アンジェリークは考えた。
あたりはしんと静まり返って、胸の鼓動が煩く聞こえる。
大好きな人との久しぶりの再会。
ただし、敵同士としてだが・・・。
そこまで考えてアンジェリークは考えをはらった。
意味のない事だと悟ったから。
「人身御供のつもりか?」
その人は、冷徹な仮面を纏ってそう尋ねた。
アンジェリークは首を振る。
茶色い髪が宙を舞う。
そんなアンジェリークにレヴィアスはふっと笑みを浮かべた。
「やっぱり甘いな・・・。」
その表情はアリオスのもの。
その声はアリオスのもの。
「けど、そんなんじゃあ女王様は務まらねぇぜ?」
からかう口調も彼だ。
「これからはあいつらに守ってもらえよ?」
レヴィアスの・・・アリオスの考えている事がわかって首を振る。
彼はそんなアンジェリークに苦笑を浮かべ、その笑みはやがて自嘲のものとなった。
「俺もバカだな。こんな奴を好きになるなんて。」
呟くように細い声は、けれど決意に満ちていて・・・。
「アリオス!!」
遠ざけるように、アリオスは叫んだ彼女を軽く押す。
終わりは一瞬だった。
綺麗に笑みを浮かべたアリオスが消えていく・・・。
跡形もなく・・・。
「いやぁぁぁ・・・。」
叫びは宮殿中に響き、涙がとめどなく溢れた。
ぱっと、とアンジェリークは目を覚ました。
「夢・・・?」
あまりにリアルなそれは、過去に現実として起きたもの。
いっそ、すべて夢であればと思い、身を起こす。
眠れそうにもない。
窓へ近づきそっと開けると、月の光が優しく彼女を包んだ。
「どうして・・・?」
呟きは何度も繰り返したもの。
どうして彼は彼女を置いて逝ってしまったのか?
答えはわかっている。
彼女の事を思ってだ。
けれど、そんな思いやりなど欲しくなかった。
ただ、そばにいれればいいと、そう願ったのに・・・。
道はもう交わる事はないのだろう。
だから・・・。
全てを愛し、全てを包む女王たる自分だれど今だけは。
一人のただの人間として祈らせてください。
アリオスが、今度は道を踏み外さないように。
アリオスが、再び一人になる事がないように。
アリオスが、幸せであるように・・・。
はい、パラレルの手直し版です。
まったく話が変わってしまってますが。(苦笑)
でもまぁ、書きたかったことは変わらないのでOKです。(笑)
タイトルは変わってなかったり。
なんとな〜く『想い』に話が似た気が・・・。(汗)
下にオマケがあります。
実は、このオマケが一番書きたかったりして。(笑)
不意に、静かな音が聞こえてきた。
「これは・・・オカリナ?」
そういえば、アリオスはオカリナが好きだったっけ・・・。
よくプレゼントした事を思い出しながら耳を傾ける。
やがて、曲はアリオスの吹いていたものに変わった。
懐かしい音色に、その主を探す。
それにしても、こんな夜更けにに誰が?
ゆっくりと目を凝らすと、ようやく人影を見つける事が出来た。
髪が月の光を照らし返し、銀に光っている・・・。
まるでアリオスみたいだと、悲しげにアンジェリークは微笑んだ。
「よぉ。」
その人影が近づきてきて、声を発する。
その声は・・・。
「アリオス・・・?」
半信半疑で、尋ねた。
「あぁ。久しぶりだな。」
満月が二人の再会を祝福していた。
Fin
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